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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#76_西の韋駄天、森と湖の国へ!! - 佐野萌子壮行会

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6月24日(日)、京都大学吉田キャンパス(京都市左京区)及びその周辺において佐野萌子壮行会が開催された。佐野萌子選手(京都女子大学4)は、7月16日(月)に開幕する世界大学選手権(WUOC2018)※1に日本代表として出場する。参加者らは京大京女OLC有志が運営するキャンパススプリントやミニフォトロゲに汗を流し、フィンランドで戦う佐野選手の前途を祝した。
※1) 俗にユニバーと呼ばれるこの大会の詳細は、記事の後半で紹介する。

 

晴天の下、いざ京都

西広域を襲った地震(注)から6日後、前日の曇り空から一転して晴れ渡った日曜日を迎えた。この絶好のタイミングで開催される壮行会に突撃取材を敢行すべく、記者は一路京都へ飛んだ。
(注) 6月18日(月)の大阪府北部を震源とする地震により被災された皆様にお見舞い申し上げます。

 

京都大学吉田キャンパスは、最近立て看板が撤去されたり交差点の真ん中でコタツを囲む学生がいたりと話題に事欠かない。そんな混沌とは裏腹に京阪出町柳駅から徒歩15分の好立地である。

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出町柳駅は京阪の大事なターミナルだ

 

会場は文学部の講義室。記者が会場入りした頃には既に準備万端といった様子であった。壮行会に欠かせない募金箱も受付の目立つ場所に設置されている。

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500万円くらい入りそうなサイズの箱

 

メリハリ・キャンパススプリント

この日のプログラムは、

  午前:キャンパススプリント(自由出走)

  午後:ミニフォトロゲ

の二本立てとなっていた。スプリントのスタート地区は吉田キャンパス東側の吉田山に位置する。

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スタート地区下の鳥居と参加者(@mmm3_OU)

 

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軽装で蚊に耐えるスタート役員(※自由出走)


吉田山は道から眺めるぶんには藪々しいが、フォレストとして捉えればすこぶる爽快なテレインだ。純キャンパス向きの軽装備で出走した人は苦戦した模様である。吉田山ダウンヒルを終えた後半では一気にキャンパス構内へと飛ばされ、地図上の通行禁止エリアに注意しながらの高速レースが展開された。個々の建物/区画が大きい吉田キャンパスでは、脱出方向のミスがルートチョイス全体に響きやすい。長い道走りの途中にどれだけ抜け道を先読みできるかがポイントとなった。

 

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佐野チャンプのルート(19/54位, 21’35)

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佐野チャンプのレベルになるとレース中に地図を修正してしまう

 

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記者は世界レベルの人を相手に8秒差と大健闘だ!!!

 

何度も走ったお馴染みのテレインゆえに記者もマンネリ化を危惧していたが、良い意味で予想を裏切る良コースであった。コースセッターの伴さん(京都大学4)が頭をひねったに違いない。
ところで気になったのが、公式掲示板に書かれていた以下の文言だ。

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どうやら西側のキャンパスエリアと東側の吉田山エリアの接合で不具合があった模様。記者は競技責任者の伴さん(京都大学4)にインタビューを試みた。

 

-接合に失敗とはどういうことですか?

「吉田山エリアはOCADデータを紛失中なので、画像を重ねたところ失敗しました」

 

京都一白い(エリアもある)テレイン、吉田山のOCADデータがないというのは由々しき事態だ。京大京女OLC37期の皆さんが卒業記念事業として吉田山をリメイクすることを願ってやまない。
そんなこんなで満足度の高い午前の部であった。否が応でも午後のミニフォトロゲへの期待が高まる。

 

コウシンで昼食を

実はこの日、ある中華料理屋が閉店を迎えようとしていた。その名も「コウシン」。学生街によくありそうな、コストパフォーマンスに優れる個人経営の店舗だ。

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実はミニフォトロゲのチェックポイントにもなっていたコウシン

 

数多くあるメニューの中でも学生オリエンティアの間で有名だったのが「辛口煮」である。この日は最後の営業日ということもあり、辛口煮を楽しむオリエンティア以外にも大勢の京大生で席が埋められていた。

 

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最初に写真を撮り忘れたのでライスが少し減っている。

 

フォトノロケもといフォトロゲ

辛口煮で腹を満たした記者は、急ぎ会場へ戻った。ミニフォトロゲのスタート時刻が迫っていたのである。午前中に各々のタイミングで出走していた参加者らが一堂に会し、会場は大いに賑わっていた。

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ミニフォトロゲ開始前にごった返す会場

 

その後スタート地区へと移動し、配布された地図を見る。“ミニ”フォトロゲというからてっきりキャンパス内中心のスコアOかとばかり思っていたら、縮尺1:15,000のストリートマップが現れた!
きっと競技責任者の伴さん(京都大学4)が力を注いだに違いない。記者は再び伴さんにインタビューを試みた。

 

-ミニフォトロゲの地図でこだわったのはどんな点ですか?

「佐野選手の思い出の地をふんだんに盛り込みました。全て基盤地図情報から作っています」

クラブ内にストリートマップをささっと作ってくれる伴さんのような人がいれば非常に楽しそうだ。細かな路地が入り組んだ京都の街並みも、ストリートOには大事な要素なのかもしれない。
そんなことをぼんやり考えているうちに、スタート時刻が訪れた。

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スタートの号砲とともに散らばる参加者

このフォトロゲの得点表(諸般の事情により掲載不可)を見てみると、スタートからの距離に応じて点数配分がなされているほか、佐野選手の思い入れが強い場所を全て回ればボーナス点というルールになっていた。
しかしこの思い入れスポット、競技時間(1h)では回れなさそうな広域配置。記者としてはそれでも突撃すべきだが、なにせ腹が辛口煮で満ち満ちていて全力で走れない。迷った挙句「キャンパス周囲でできるだけがんばる作戦」に打って出た。つまり妥協である。

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記者の心が折れたポイント

 

結論から述べると、思い入れスポット巡りは途中で断念した。
いかにもデートスポットっぽい場所をいくつか回って坂の上の病院にたどり着いたとき、「もっと自分の行きたい場所に行った方が楽しいのでは?」という疑問が頭をもたげてきたのである。その後は寺社をターゲットとする方針で攻めたが、結局想定よりも時間がかかってしまい当初のプランから2か所程度漏らして制限時間内でのゴールとなった。しかし細い道をつないで走り回るのは意外とスリリングで飽きない。辛口煮と同じくらいフォトロゲが好きな記者としても、満足度の高い地図とコースであった。

 

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時間いっぱい全力で走り切って笑顔の参加者

 

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ナチュラルに時間オーバーする参加者

 

今回の記者の後悔ポイントは大きく2つ。

 ・平安神宮など、もうちょっと京都らしいところに行けばよかった

 ・誰かとグループを組めばよかった。集団で回っている人たちはとても楽しそう

といったところだろうか。しかしこの後悔を差し引いても本当に楽しいフォトロゲだったのは間違いない。
ちょっとした街並みに歴史を感じられる京都。素晴らしい街である。

 

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佐野チャンプのルート。思い入れが結構切り捨てられている

 

佐野選手にズームイン

ここまで記者目線の体験記であったが、今回の主役である佐野萌子選手への独占インタビューに成功した。

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WUOC2018 日本代表・佐野萌子選手(京都女子大学4)

 

-今回のユニバーに、佐野選手はどのような形で参加されるのですか?

「スプリントリレー/スプリント/ロング/リレーの4種目に出場します。7/9に出国し、7/24に帰国する予定です」

-2年前にはスイスでのジュニア世界選手権(JWOC)に出場されました。当時と心持ちが異なる部分はなにかありますか?

「インカレチャンプになってしまった※3ことは、やはりプレッシャーになっています。2年前とは違って、楽しければそれでいいというわけにもいかないと思っていて、結果にこだわりたいです」
※3) 2017年度インカレ・スプリント(岐阜)

-結果に関して、具体的な目標のようなものはありますか?

「まずスプリントは日本チームの中でトップになりたいです。また、どの種目でも全選手の中で真ん中あたりの位置につけたいなと思っています」

-膝の怪我で全日本大会(6/17)も欠場したようですが、今のところ影響はありそうですか?

青山高原で木の枝が膝に刺さって6針縫う怪我をしました。怪我をした瞬間はもうだめだと思っていましたが、今日の壮行会でもある程度走れたので問題ないでしょう。2年前にも似たような怪我をしたので何かの呪いかと思いました(笑)」

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代表チームのTシャツ。佐野選手が着用しているのは色違い

 

-フィンランドと言えばムーミンです。好きなキャラクターは何ですか?

「ニョロニョロ※4です(即答)。ムーミン自体にそこまで興味はないのですが、中学高校で仲の良かった友達にもらったのがニョロニョロのタオルでした。それがきっかけで好きになりました」
※4) 見た目がニョロニョロしたキャラ。ほぼ無害とされる。

-ところで、卒業したら日本学連の技術委員※5になりませんか?

「国内で完結できる業務であれば協力できると思います。これまで自分が教わってきたことを後輩に還元していくことにも力を入れたいと考えていました」
※5) インカレの規則運用やユニバーへの代表派遣業務、学連合宿の開催などを担う。

-最後に、仲間やOBの方へ向けてメッセージをどうぞ。

「いつもトレーニングや練習など様々な面でお世話になっています。ちょっとしたことでも褒めてくれる京女の人たちや、いつも私を輪の中に引き入れてくれる京大の人たちのおかげで、これまで競技に対してストイックに取り組んでくることができました。このユニバーでの結果や、今後の後輩への指導を通じて恩返しをしていければと思っています。応援よろしくお願いします!」

-ありがとうございました。ユニバーがんばってきてください!

 

関西が誇るインカレチャンプ-佐野萌子選手。小柄な体に大きな責任感を秘めた彼女が、フィンランドの地で存分に暴れまわることを願ってやまない。
日本に帰ってくるころにはきっと一回り大きく成長して、関西に新たな風を吹き込んでくれることだろう。

やったれ!佐野萌子!

 

[参考]WUOCを楽しもう!

〈 WUOCってどんな大会? 〉

世界大学オリエンテーリング選手権(WUOC, 通称ユニバー)は、国際大学スポーツ連盟(FISU)が主催する学生オリエンテーリングの国際大会です。大学生の五輪としてユニバーシアードがよく知られていますが、実はフットオリエンテーリングユニバーシアードの種目に含まれていません。そのためユニバーシアードとは別にFISU主催のWUOCが2年に一度開催されているというわけ。「ユニバー」というのはあくまで俗称なのです。
WUOCの出場資格は、17-25歳の大学生であること。今年でいうと1993-2000年生まれの学生が対象です。
また、各国男女6名ずつ(総計12名)の選手と5名のオフィシャルを派遣できるとされています。 

〈 WUOC2018について 〉

そんなWUOCは、1978年から今に至るまで継続開催されており、今年は21回目の大会となります。記事本文中で触れているように開催地はフィンランド※6で、主な会場となるのは西部の南ポフマンヤー県にあるクオルタネ/セイナヨキ/ラプアという3つの街。中でも五輪トレーニングセンターの置かれているクオルタネが大会の中心です。
※6)実はフィンランドでの開催は第1回大会以来40年ぶり!

複数回開催されている国も多い中、フィンランドで一度しか開かれていないのは意外ですね。

概要はこのくらいにして大会日程を見てみましょう。要項を参考に表を作ってみました。

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例えば佐野選手はミドル以外の全種目に出場予定ですから、水曜以外は出ずっぱりということに。日本時間ではもっと深夜の観戦になるかと思いきや、そもそも競技時間帯が早めなうえにサマータイムのせいもあって意外と普通の時間。眠い目をこする必要はなさそうです。

〈 成績の目安はこんな感じ! -過去3大会での日本人女性の戦績- 〉

観戦とは言っても、成績の相場観がわからないと楽しみにくいかもしれません。今回は2012年以降の3大会に絞って日本人女性の成績をまとめてみました。次の表をご覧ください。

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氏名の左側の数字は順位です。順位が上がるほど好成績なのは確かですが、同じ順位でも母集団の大きさによって位置づけは変わってきます。完走者数の変動幅も大きく、年度が異なる大会の順位比較にはあまり意味がなさそうです。
そこで着目したいのがトップタイム比。表中に各種目赤字で示した成績は、過去3大会で最もトップタイム比が小さいものです。例えば2012年のスプリントでは、38位という順位もかなりのものですが、なんとトップタイム比で125%を叩き出しています。この成績であれば上位層をある程度射程圏に捉えているのではないでしょうか。
もちろんレースが接戦であればあるほど、少しのタイム差で順位は大きく変動します。観戦の際には見かけの順位だけでなく、トップタイム比を計算してみることで選手の位置が見えやすくなることでしょう。

以上のことを踏まえ、過去3大会のデータだけで考えてみると

 ・スプリントでトップタイム比120%

 ・ロングでトップタイム比150%

を佐野選手が達成できればかなりの偉業と言えそうです。観戦の参考にしてみてください!

  

▼佐野萌子壮行会
http://kuolc.dip.jp/

▼成績速報(Lap Center)

https://mulka2.com/lapcenter/lapcombat2/index.jsp?event=4660&file=1

▼WUOC2018公式サイト

https://www.wuoc2018.com/

国際大学スポーツ連盟-Results
http://www.fisu.net/results

▼2018年度日本代表選手一覧

http://www.orienteering.or.jp/NT/news/2018/0410_2018_4.php

 

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