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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#100_雨中の駒ヶ根スプリント、桃井と伊部が制す! - 2018年度インカレスプリント

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9月15日、長野県駒ケ根市の『アルプスの丘2018』を舞台に「2018年度日本学生オリエンテーリング選手権大会 スプリント競技部門」(インカレスプリント)が開催され、男子選手権は桃井陽佑(慶應義塾大学3年)、女子選手権は伊部琴美(名古屋大学2年)が制した。

 

※9/16 8:30 桃井選手、伊部選手のインタビューを追加しました
9/18 21:50 桃井選手、伊部選手のルート図を追加しました

今年のインカレスプリントはどこでも観戦可能に!

3年前、インカレにスプリント競技部門が新設され、秋インカレはスプリント競技部門とロング・ディスタンス競技部門の2日間大会となった。新しい競技部門ということで、運営は毎年苦労している様子も見られたが、学生オリエンテーリング界最高峰の舞台の1つとして定着し、多くの学生が目標とする場となった。
そして、4年目となった今年のインカレスプリントでは、1つの思い切った試みが行われた。それは『テレイン内のどこでも観戦可能』というものだ。インカレスプリントの試行大会で行われた方式であり、また、インカレ以外でも第3回全日本スプリント(2010年、ひたち海浜公園)で行われたと記憶している。観戦の手法としては大変盛り上がるものであるが、一方で観戦する側もしっかりルールを守らないと競技の公平さを欠く危険もある。例えば、選手が通ると想定されるルート上を観客がふさぐことはあってはならないし、応援のときに「次は右のルートが速いぞ」など観客が選手に助言するようなことはあってはならない。その点は、運営者からも再三の注意喚起が行われていた。実際のところは、問題があったのか、それとも全く無かったのか、筆者は全容を把握できていたわけではないが、少なくともインカレスプリントにより学生の間で「スプリント」という競技が従来以上に定着したからこそ成しえた手法だったのではないだろうか。

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会場で配布された観戦ガイドより抜粋(ME/WEの前半)
コース図と共に、撮影オススメポイントの情報もある

 

降りしきる雨の中、駆け抜ける選手たち

今年のインカレスプリントは競技中も雨に見舞われ、テレイン内はすべりやすく、会場の地面もどろどろの箇所が存在するなど、選手・観戦者共にコンディションの悪い状態であった。しかしながら、選手権の競技が始まった会場では、仲間を応援しようと、学生たちが声を張り上げていた。

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雨の会場

 

テレイン範囲は狭く、選手権のコースは1枚の地図に2つの地図が書かれており、前半と後半で分かれている方式であった。このうち、前半については観戦ガイドの所でも紹介したエリアだが、男子/女子両選手権で共通のコースであった。7番コントロール付近は駐車場内でルートチョイスを設けてしまおうという驚きのコースセットであり、参加者の車の間に通行禁止の箇所を複数設けて(現地にはコーンとポール、テープで立入禁止を示している)複雑なエリアを実現していた。なお、競技時間帯は、このエリアの車は動かしてはいけないルールとなっていた。

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駐車場のルートチョイス(地図と現地)

 

なお、コース設定者である谷川友太に話を伺ってみたところ「本大会のコースはルートチョイスが多く存在するものの、選んだルートによりタイム差はそれほど大きくない」とのことであった。中には、MEの13→14など、明らかにタイムがかさむルートが存在するレッグもあるそうだが。レースとしては、深く考えすぎず、スピードを維持して走ることがカギだったのかもしれない。

 

選手権のレースはまず女子選手権が行われた。優勝設定時間は12分であり、第1中間想定は4分40秒であったが、序盤で上位に立っていた伊東加織(東北大学3年)や香取菜穂(千葉大学4年)で5分10秒を過ぎるレベルだったため、雨のせいか優勝設定時間よりは時間がかかるレース展開となるかと思われた。終盤の時間帯になり、第1中間時点では1位が5:01で伊部琴美(名古屋大学2年)、2位が5:07で増澤すず(筑波大学3年)、3位が5:09で青代香菜子(東北大学3年)と僅差の争いとなっていたが、ここから速かったのが伊部であった。じわじわと後続を離していき、最終的には2位に38秒もの差をつけて12分13秒のタイムで優勝を決めた。
伊部はJWOCのスプリントで日本人女子歴代最高順位を出し、実力者としても広く知られる存在ではあったが、学生選手権の舞台でも前評判に違わぬ実力を発揮した。

優勝した伊部にインタビューを行った。

 

―優勝おめでとうございます。今回のインカレスプリント、どのような準備をして臨みましたか?

伊部:優勝を目指していました。走れる日はできるだけ走って体力を落とさないようにしていました。あと、スプリント練習を部でやる機会をたくさん作っていただいたので練習を多くできました。

―レースの感想を教えてください。

伊部:思ってたより範囲が狭く2マップということに驚きました。

細かく読むのが難しかったですが、テクニカルなコースでとても楽しかったです。

―レース中、うまくいった箇所があれば教えてください。

伊部:駐車場の立禁迷路がスムーズに行けたので嬉しかったです。

―今回、テレイン全体に観客がいるという、普段ないシチュエーションだったかと思います。自身のレースへの影響はいかがでしたか?

伊部:小径から出ていきなり観客がいっぱいいてびっくりしました。ずっと応援の声が聞こえてて励みになりました。

―最後に、優勝しての感想を教えてください。

伊部:最初通行禁止のとこを通って実はペナだったんじゃないかと思って素直に喜べなかったんですが、確実に大丈夫とわかって本当に優勝できた嬉しさがじわじわとこみ上げてきました。最後まで走りきってよかったです。スプリントあと2回優勝できるように頑張ります。

―回答ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます。

 

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女子選手権 伊部のルート図

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フィニッシュレーンを駆け抜ける伊部

 

男子選手権は、優勝設定時間の第1中間想定は4分であったが、序盤は伴広輝(京都大学4年)が4分3秒とほぼ優勝想定通りのタイムを出し、しばらくして昨年優勝の種市雅也(東京大学3年)も同じく4分3秒で通過。その後、伊藤樹(横浜国立大学4年)が3分52秒と圧巻のタイムをたたき出した。だいたい、優勝想定通りを少し切るレース展開となるのか、このまま伊藤が押し切るのか…とも思われたが、このとき優勝設定時間ほぼぴったりにフィニッシュした選手がいた。桃井陽佑(慶應義塾大学3年)である。第2中間までに、伊藤や種市を含む多くの選手が優勝想定から30秒以上離されていく中、桃井はただ1人優勝想定通りのレースを展開し、ふたを開ければ2位に30秒もの差をつけての優勝となった。

優勝した桃井にインタビューを行った。

 

―優勝おめでとうございます。今回のインカレスプリント、どのような準備をして臨みましたか?

桃井:インカレスプリントの目標は優勝でした。そのためにまず走力が何より重要だと考えたので、走力を鍛えるため日々のラントレを継続して行い、また時には追い込むことを意識したりしていました。また並行して体幹を鍛えていたのですが、この「体幹の強さ」は走行中の地図読みを安定させたり、スプリント中の機敏な方向変化への対応ができたりとスプリントへの良い効果が沢山あったので、鍛えていて本当に良かったと思いました。

―レースの感想を教えてください。

桃井:ほぼ全ての区間がビジュアルとなっており、沢山の応援・声援の中走ることができたので、とても楽しかったです。海外のスプリントを走っているみたいでした。またコースが面白く、ルートチョイス・立入禁止・方向維持など、様々な課題が盛り込まれていたので楽しく走れました。

―今回、テレイン全体に観客がいるという、普段ないシチュエーションだったかと思います。自身のレースへの影響はいかがでしたか?

桃井:最初はとても戸惑いレースに集中するのが難しかったですが、中盤以降でこのシチュエーションに慣れてきた時には、観客や人の目を気にせずレースに集中して走れるようになっており、この状況を楽しむことができました。また、体力的に苦しい場面では応援の声に何度も助けられて、最後まで走り切ることができました。

―レース中にミスをしてしまったところ、あるいは逆にうまくいったところがあれば教えてください。

桃井:今回細かいミスは多々ありましたが、悔いが残るような大きなミスはありませんでした。また上手くいった点に関してですが、今回のレースではペース配分が上手くいったと考えていて、前半(9ポまで)は淡々とこなすような守りの走りをして、地図が2枚目になった後半(10ポ以降)に頑張って追い込む攻めの走りをしたことによって、自分を限界まで追い込んで走ることができたので、ペース配分が上手くいって良かったと思います。

―第1中間後のタイムが他選手より好調なように見えましたが、こういう背景もあったのですね。最後に、優勝しての感想を教えてください。

桃井:正直、未だに優勝したという実感が湧きません。ただ昨年度のインカレスプリントを終えてから、今回のインカレでの優勝を目標にしてスプリントに取り組んできたので、目標を達成できてとても嬉しいです。ずっと憧れていたインカレ表彰台のてっぺんから見た景色は筆舌に尽くしがたい素晴らしいものでした。

―回答ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます。

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男子選手権 桃井のルート図

※会場付近を通過する桃井の写真は表紙に掲載
 

明日も同じ会場だが、今度は駒ケ根高原の広い範囲でロング・ディスタンス競技部門が行われる。天気は多少良くなるとの情報もあるが、どのようなレースが展開されるだろうか。

明日の熱戦からも目が離せない!

  

▼インカレスプリント・ロング2018
http://orienteering.com/~icsl2018/index.html

▼IC2018 sprint - YouTube
https://youtu.be/AxeQkizANpk

 

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