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#117_2018年を108コントロールで締めくくる – ときわ走林会創立15周年記念 煩悩滅却百八式

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12月29日、栃木県県矢板市で「ときわ走林会創立15周年記念オリエンテーリング大会 煩悩滅却百八式」が開催された。最長クラスの「百八式」は17.9km、登距離1000m、コントロール数108という超ロングレースであったが、橘孝祐(ES関東C)が2:38:21のタイムで制した。

 

↓大会前の宣伝記事はこちら

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かつて大きな話題を呼んだ百式が、年末に「百八式」としてパワーアップして帰ってくる…ということで注目を集めた本大会。2018年の締めくくりに、多くの参加者が煩悩滅却に挑んだ。舞台はおなじみ栃木県矢板市。本大会では『矢板幸岡』『矢板山苗代』『倉掛遊水池』の3テレインが連結したB4サイズ1:15,000の特製地図にて競技が行われた。

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108コントロールともなると、コントロール位置説明もすさまじい存在感である…

スタートは自由な時間に出走できるフリースタート方式であったが、スタートが遅くなるほど競技時間は短くなってしまう。ならば早めに出走する参加者が多くてスタート地区が混雑する…と予想されたものの、そのようなことはなく、参加者はうまい具合にばらけてパラパラと出走を始めていた。当日は雪がちらつく天気であり、会場は暖房が効いて大変暖かい環境であったため、ロングレースを前にしてなかなか会場から脱出できない参加者も多かったのかもしれない。
コースは各レッグが短く、コンピ(コントロールピッキング:前のコントロールが、次のコントロールのアタックポイントになるような、短いレッグが続く形式。頻繁な方向変換に対する練習メニューで取り入れられることも多い)のような印象を受ける。かつての百式では、静岡の『鳥追窪』でテレインの端から端までをつなぐ超ロングレッグが組まれたこともあったが、本大会ではそのようなことは無かった。レース後、コース設定者の細川知希に聞いてみたところ「ロングレッグは当初入れたいと考えていたが、富士(鳥追窪)と違ってところどころ大きな道路を横断しなければならず、その制約が大きかったのでロングレッグはやめてコンピ主体のコースとした」とのことであった。また、コースについて詳しく聞いてみたところ、衝撃の回答が返ってきた。

実は、最初に組んでみたコースはインパクト勝負で「(コントロールを)全部穴にしていたとのことであった。これが実現されていたら、コントロール位置説明には108個のVが並んでいたのだろうか…。なお、これは周りの運営者から却下されたそうであるが、却下理由は「テレイン中の穴は炭焼き窯跡が多く、道からすぐの位置に存在している。コントロールを全部穴にしたら<道を走ってアタック>をひたすら繰り返すことになり途中で飽きてしまう」という至極もっともなものであった。その後、試行錯誤を繰り返して最終的なコースが出来上がったそうだが、細川は「(自分は)実は百八式のコースは完走していなかった」と懺悔していた。

さて、レースの話に戻そう。コースの途中には、関門を兼ねた給水所、救護所があったが、こちらで用意されていた品々が豪華であった。給水は水だけでなく、オレンジジュースやスポーツドリンクも、また、給食としてビスケット、チョコレートなどなど多種多様なお菓子が並んでいた。長距離レースの休憩所としてはありがたい限りである。長距離レースということで、参加者はそもそも小さなリュックに食料や飲料を携行する者も多かったが「携行品に全く手を付けなくても給水所で用意された品だけで乗り切れた」という声も多かった。それほどに充実していたのである。余談ではあるが、筆者は相当疲れていた中でこの給水所の存在が大変ありがたく「うっめー、まじうっめー、それにしてもうっめー」と要は流れるようにしつこいくらいに「うまい」を連呼していた。ごちそうさまでした。

レースも終盤4分の1となり、参加者には疲労が蓄積していく。しかし、終盤のエリアはアップダウンが激しいのである。まさに最後の難関といったところか、簡単にはフィニッシュさせてくれない。しかし、この難関を乗り越えてこその煩悩滅却である。「心を無にしていた」「残りレッグ数を全力でカウントダウンしていた」など、参加者は思い思いの手法で終盤のコースを攻略していく。そして、目の前に現れる会場までの下り坂…フィニッシュに辿り着いたとき、各参加者には非常に大きな達成感が満ちていた。大変疲れているが、しかし晴れ晴れとした表情の参加者が多かったことも印象的であった。暖かい会場に戻ってくると、そこには温かい飲料が。運営者が用意していたものだったが、疲れた参加者には大変しみわたる味だった。 

このロングレースを制したのは、ES関東Cの橘孝祐。ロングレースにもかかわらず、2位の種市雅也(東大OLK)とはわずか19秒差となる接戦であった。最終コントロールからフィニッシュまでの俗にいう「ラスポゴール」も単独1位のタイムを叩き出すなど、最後まで全力で走り切った姿が印象的であった(なお、本大会のOKリーグの特別点は『ラスポゴール賞』であったため、橘の走りは優勝6点と特別点4点の計10点をES関東Cにもたらすスーパープレイとなった)。「密かに優勝を狙っていたので、とても嬉しい」と話す橘に、レースの感想も伺ってみたところ「短いレッグが多く、目の前のレッグをこなしていたらいつの間にか終盤だった、という印象で、飽きがなく走ることができました。2位の種市選手との競り合いが40~50レッグほどあり、良い緊張感の中で走り続けることができました。実走距離20km以上のレースでこんな秒差になるとは思っていませんでした」と話していた。橘は、12月は30km程度のトレランを3回ほどこなし、体力的には大丈夫なように準備していたそうである。


続いて、本大会について、ときわ走林会会長の八神遥介にインタビューをしてみた。

―運営おつかれさまでした。百八式の運営をしてみての感想を教えてください。

八神:正直、私個人としては、ありきたりな「ほっとした」といった感情はあまり無いです。むしろ「やってやったぜ!」の方が近いですね。それもこれも、準備段階から自発的に動いてくれた重役の皆さんのおかげだと思います。

―本大会では、同一コントロールを複数回通過するレッグは無かったので、コントロール数はおそらく百八個だと思いますが…設置・撤収は相当大変だったことと思います。どれくらいの時間がかかったのでしょうか…?

八神:おっしゃる通り、総コントロール数は百八個です。テープ巻き無しで、全て前日に丸一日かけて設置とクロスチェックを行いました。仮にミス設置する可能性が1%だとしても、どこかで間違える計算になるので、チェックはかなり入念にやりました。

―宣伝記事では「100回に1回のミスが起こってしまうレース」というのが書かれていた気がしますが、それは確かに設置にも言えることですね。

八神:撤収は、関門閉鎖後は使わない山苗代エリアから着手するなど、競技スケジュールと連動して進めました。それでも最後は日没との競争でしたね。

―上位陣のタイムについての感想を教えてください。

八神:正直、想定より遥かに早かったです。私が過去に参加した百式では、同じくらいの距離・登りでトップが3時間程度でした。全体でも完走率が非常に高く、幅広い人に楽しんで貰えたかなと思いつつも、物足りない人もいたかもしれないなと考えています。この辺り、次回があるなら課題ですね。

―最後に、参加者のみなさんに一言お願いします。

八神:この度はご参加ありがとうございました。寒い中の長距離レース、本当に大変だったかと思いますが、2018年の煩悩を一つでも多く滅却して頂けたなら光栄です。ときわ走林会では今後も真面目な大会、クレイジーな大会、どちらも積極的に手を出していきたいと思います。我々の次回作にご期待ください。
もちろんご入会も大歓迎です!

 

競技の内容はもちろんのこと、サービス面も充実しており、まさに2018年を締める舞台にふさわしい大会となった。煩悩滅却した参加者は、清らかな気持ちで新たな年を迎えたことであろう。

 

▼大会公式Webサイト
http://tokiwa-sorinkai.net/compr/15th100shiki.com

▼成績速報(Lap Center)

https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=4993

 

※執筆遅くなり、楽しみにしていた方には大変申し訳ありません。

 

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