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#113_挑戦的な2日間…早慶2daysの幕開け! – 第8回KOLC大会

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1110日、11日と早慶2daysが開催された。初日の10日は、長野県茅野市の『千駄刈の森2018』を舞台に「第8KOLC大会」が開催され、M21Eは戸上直哉(三河OLC)、W21Eは宮川早穂(ES関東C)が制した。

 

世間一般的に、早稲田大学慶應義塾大学はライバル扱いされることも多く、両者の動向は対比的に注目されることも多い。例えば、様々なスポーツで行われる「早慶戦」は注目度の高いイベントとなっている。その中にあって、2018年、日本オリエンテーリング界にビッグニュースが舞い込んだ。「201811月、早大OCKOLCで二日間大会を行う」…その情報に、オリエンティアが沸かないはずがなかった。早慶による二日間大会、というだけでも話題性は十分なのだが、関東を飛び出して長野県での開催、二日ともJOA公認大会(カテゴリA)という点にも注目が集まった。

KOLC大会は、2月に開催を予定していた第7回大会が積雪のため5月に延期されたため、2018年度内2回目の開催となった。舞台となる『千駄刈の森2018』は、かつてCC7が開催されたテレインでもあり、視界は抜群に良い一方で、地面は岩がちな個所もあり、スピードは思ったよりも出しにくい。当日の開場時刻の頃は会場周辺には霧が立ち込めており、レース難易度の急上昇が心配されたが、レースが始まる頃には霧も晴れて良いコンディションとなった。

 

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開場時の会場周辺の様子

本大会のコース設定について、設定者の西下遼介に話を伺ってみたところ「ミドルディスタンス競技の原則に則り、常に難しくナビゲーションにストレスがあるような、本来のミドルを味わってもらうことを狙っていた」とのことだった。そのための勉強としてWOC(世界選手権)のコースなどを調べたそうだが「緩斜面で岩が多いテレインとして千駄刈に似ていると感じた、チェコで開催されたWOC2008ミドルのコースを特に参考にした。コンタリングや直進など、課題の出し方を参考にした」とのことだった。また「調査してみてテレイン内には道が多かったが、レッグの方向を道と平行ではなくクロスさせるようにする、そもそも道に出る回数を抑える、などしてミドルらしくなるよう意識した。テレイン南のエリアは今回の新規調査の一つだが、難易度はそれほど難しくないが、尾根をしっかり辿ってコントロールに辿り着くことを問うた」と話していた。

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レース後に行われたコース解説

この本格ミドルを狙って組まれたコースを制したのは、M21E:戸上直哉(三河OLC)、W21E:宮川早穂(ES関東C)であった。両者にレースを振り返ってもらったところ、戸上は「全体的に笹や岩で足場が悪いテレインでしたが、視界は良好だったので楽しんでレースができました。できる限り遠くを見て自分が向かうところを見た上で、その方向に無駄の無いように進むよう心掛けたのが良かったと思います。とはいえ、実際無駄もありましたが…。終盤は登りとか辛くて歩いてしまったりもしたが、他の人に比べたらよかったのかもしれません。優勝とは思っておらず、入賞かどうかかなと思っていました…」と話してくれた。
一方、宮川は
「走りづらかったです…全然前に進みませんでした。とはいえ、2ポで河村優花さん(名大OLC)に追いついて、最後まで2人で高めっていたので、スピードが出ないなりに出ていたのかもしれません。アタックも全然止まらなかったので、抜きつ抜かれつのレース展開でした。5月の第7回大会に続き、KOLC大会で連覇できてうれしいです」と振り返っていた。

また、2人ともCC7でこのテレインには入ったことがあるとのことだったので、当時との印象の違いについて聞いてみたところ、戸上はCC7のときと印象は変わらなかったと話していた一方、宮川はかなり印象が違ったと話していた。というのも、CC7では女性選手は短い区間を走る場合が多く、宮川がかつて走った時も短くて道の割合が多いコースだったという。本大会はそれに対して長く、山の中を走る割合が多かったため「(CC7のときより)走りにくい感覚があった」とのことだった。

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M21Eコース(ルート解説図) △→1は赤線がコース設定者想定ベストルートに近いとのこと

 

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W21Eコース(ルート解説図)

 

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M21E入賞者

 

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W21E入賞者

 

さて、冒頭にも述べたように、事前から大きな注目を集めた本大会であるが、その準備はどのように進んだのだろうか?

本大会について、運営責任者の大田雄哉にインタビューをしてみた。

―運営おつかれさまでした。まずは今回、長野での大会開催を決断した背景を教えてください。

大田:当初我々はニューマップの作製を計画しており、長野県内のとある地域に目をつけておりました。予定では2月の開催を目指しておりましたが、前回の第7KOLC大会が降雪により延期になったのを目の当たりにしていたこともあり、降雪の影響が少なく、かつ第7回大会から充分な期間が空いている11月末日に開催しようという流れになりました。このことを長野県協会の木村さんに相談させて頂いたところ、猟期が11月の中旬から始まりその期間は大会を開催するのが困難であること、さらに第39早大OC大会が既に1111日開催を目指して最終調整をしていることを教えていただきました。残念ながらと言うべきか、早大OC大会の方が歴史も長く、ネームバリューも大きいことは否定できないかなと思います。実際、運営陣内でも早大OC大会と殴り合いになってしまえば、遠方での開催の手間に見合う集客を充分にできないだろうという見方が大半を占めており、私自身も当初は長野県内での開催を諦めざるを得ないかなと考えておりました。

―なるほど…。最初から早大OCと連携をとっていたわけではないのですね。

大田:しかし、ある日キャンパス内に置いてある慶早戦の看板を眺めているときに思いつきました。早大OCが同じ時期に同じ県内で大会を開催するという状況はむしろチャンスなのではないか。やり方によっては互いにwin-winになるのではないかと考えました。幸いなことに私は早大OC内には気心知れた友人が多く、その人脈を通してコンタクトをとり、伊豆大島の岡田港ターミナルの階段裏で早大OC大会の大会責任者である大橋君や競技責任者の長谷川君と会議を取り持つことが出来ました。

―なんと、コラボの始まりとなった会議は伊豆大島で行われたんですね…。

大田:当初は早大OC側で計画していた前日大会を潰してしまうことや、競技形式に関する話など調整を要しましたが、最終的に早慶2daysを作り上げることで合意しました。つないでくれた久野さんと高橋さん、突然の話ながら耳を傾けてくれ、ともに早慶daysの実現に尽力してくれた大橋君と長谷川君に感謝の意をここで示したいと思います。

ところで、この会議の後1月の初めに、渉外上の理由で当初予定していたエリアでの開催を断念せざるを得なくなりました。このときも長野県内での開催が危ぶまれ、先輩たちからも早慶2days自体を白紙に戻そうという主張も出ました。しかし、今大会を終えて、あの時諦めずにコラボに最後までこだわり続けて間違っていなかったのだなと振り返っています。

早慶2daysとしてのこだわりが、この大会の盛り上がりにつながっているのは間違いないでしょうね。ここで、コラボの話も出てきましたが、早大OCとのコラボは実施してみていかがでしたか?

大田:みなさんは以前に二つの学生団体がコラボをして2daysを開催した例をご存知でしょうか。私もTwitterで見かけるまでは存じ上げなかったのですが、40年近く前に一度例があるようです。(もしかしたら他にもあるかも…知識不足で申し訳ありません汗)とはいっても前例が無いに等しく、加えてKOLCの大会運営のノウハウがまだまだ未熟であることもあって、コラボをどのように料理すれば良いのか未知数でした。

運営経験不足、第7回大会の延期と第8回大会の開催時期の前倒しによる準備期間不足に加え、更に未知数な要素を加えてしまったという点ではマイナスに働いた部分も大きかったように思います。エントリー管理や資材、協賛の渉外、レンタルEカードの振り分けは特に複雑怪奇を極め、関わった諸君は本当に苦労したと思います。なんというか、、、そりゃなかなか2days開催しようとは思わないだろうな、まさに素人的な発想だったのかなと思います。

―苦労した話が先に出てきましたね…。

大田:しかし、これだけ苦労してでもやる価値のあるコラボだったのかなとも思います。今回の大会は先述の通り第7回大会の直後であり、運営に多大な制約がありました。加えて第7回大会は今でも語り草になるほどの屈指の良テレインを使用しており、オリエンテーリング界の歴史に名を遺したといっても過言ではありません。実質僅か半年の期間で第7回大会の後に続くことができるような、先輩方の作り上げてきたKOLC大会に恥じない、しかしまた別の魅力を発信する大会を開催する上でコラボ企画は必須だったと考えています。2daysかつ早大OCとの連携が可能であったことで、従来のKOLC大会では叶わなかった、参加者を丸二日楽しませる大会を提案する事が出来ました。特に完全新規作図のテレインを用いたナイトO八子ヶ峰ホテルさんは大好評で、競技とはまた別のアプローチの魅力を提供できたのかなと思います。残念ながら、まだまだ見かけ上の参加費の高さばかりが喧伝され、こうした形の大会運営は受け入れられているとは言い難いのが現状です。しかし、我々がオリエンテーリング界の歴史における前例となり、こうした大会が増えていけばなと思います。

―お話を伺ってみると、改めて非常に挑戦的な企画だったのだなと思いました。オリエンテーリングの大会は数あれど、今回の早慶2daysは多くの人から見てもイベントとして大変魅力的に映り、期待を集めるものだったと思います。今後の運営者からすれば、今回の早慶2daysを超えたい! というような、新たな目標になる大会となるかもしれませんね。改めて、運営おつかれさまでした。

 

早慶2daysの関連記事はこちら

okinfo.hatenablog.com

 

 

▼大会公式Webサイト(早慶2days

https://kolc.wasedaoc.com/competition/

 

▼成績速報(Lap Center

https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=4904

 

謝辞:表紙の写真は運営者に提供いただきました。

 

※執筆遅くなり、楽しみにしていた方には大変申し訳ありません。

 

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