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#124_東大二連覇! 筑波大16年ぶりの王座奪還! - 2018年度インカレリレー

 

 

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3月17日、前日から引き続き岐阜県恵那市の『望郷の森2019』を舞台に「2018年度日本学生オリエンテーリング選手権大会 リレー競技部門」(以下、インカレリレー)が開催され、男子選手権は東京大学(佐藤遼平-殿垣佳治-種市雅也)が昨年に続き連覇、女子選手権は筑波大学(宮本和奏-山岸夏希-増澤すず)が16年ぶりに優勝した。

 

インカレリレー史上初 GPSラッキング実施!

本大会の選手権の部では、一部学校の選手にGPSが装着された。GPSラッキングの実施はインカレスプリント、ロングでは何度か実施されているが、リレーでの適用は初となる。テレインがミドルとリレーで同じであるため、ミドルのGPS観戦は実施するわけにはいかなかったようである。リレーは全員一斉スタートであるため、時間差スタートである他の競技形式に比べ、GPSラッキングにより競り合いの様子がリアルタイムで分かりやすい。そのため、会場内外問わず、GPS観戦は大変熱を帯びていた。筆者の周りでは「インカレの会場には行けなかったが、これまでの観戦には例年以上に熱が入った。国内のオリエンテーリング観戦環境もついにここまで来たのか…」という感動の声も聞かれた。なお、コース情報の漏洩防止のため、選手権の部出走者は会場(=GPS観戦できる環境)から隔離される措置が取られていた。
一方、ここ数年行われているLap Centerによるライブ速報は、会場アナウンスによればMulkaクラウドの不具合により競技終盤まで実施できなかったとのことである。最近のインカレでは、速報はLap Centerのライブ速報で行っており、速報ボードは設けないケースも多い。そのため、GPSを装着していない学校の動向が分かりにくかったという場面もあった。

 

男子選手権の展開 ~最終盤は東大vs慶應の激突!~

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男子選手権スタート!

例年9:30開始となる男子選手権だが、今年は30分遅い10:00開始となった。GPS観戦用に公開された選手権の部のコースを見て、会場ではどよめきが起こる。「コースの難易度が高い」のである。会場では「インカレリレー史上最難では!?との声も聞かれた。史上最難かどうかはわからないが、インカレリレーのコースとしては例年以上の難しさであることは確かなようだ。

1走は東京大学の佐藤遼平が集団より抜き出る展開となった。しかし、佐藤は10番コントロールでミスをし、その間に京都大学(森河俊成)、早稲田大学(大石洋輔)ら他校の選手が東大との差を詰める。しかしその後、佐藤が立ち直り、東京大学2位の京都大学40秒程度の差で2走にチェンジオーバーする。京大、早大のほか、名古屋大学(前野達也)、新潟大学(滝沢壮太)が東大から5分以内につけている。

 

2走は順位が大きく動く。トップこそ東京大学(殿垣佳治)であることに変わりはないが、慶應義塾大学(上島浩平)が7位→2位、東北大学佐藤誠也)が10位→3位、一橋大学(大田将司)が13位→4位、横浜国立大学(稲森剛)が16位→5位と、各校のエースが大きく順位を上げる展開となった。特に、慶應義塾大学の上島は2走内1位、全体でも2位の好タイムであり、1走終了時点で6分あった東大とのタイム差を1分まで縮めた。

 

勝負を決める3走、東京大学3年連続選手権リレー出走であり昨年度インカレスプリントチャンプの種市雅也、対する慶應義塾大学は今年度インカレスプリントチャンプの桃井陽佑が出走する。種市は途中の8番コントロールで高さが合わず、手前の尾根まで戻ってしまう痛恨のミス。そして、種市の至近距離には東北大学(北見匠)が見える位置まで迫り、さらにその後ろからは横浜国立大学(伊藤樹)が猛追をかけていた。第一中間では慶應義塾大学が逆転して首位に立つ形となった。しかし、そこから種市は持ち直し、第二中間:15番コントロールにて桃井と邂逅する。この状況は、GPSにてこの上なく鮮明に会場に伝わり、稀に見る大接戦を予想し会場の熱も最高潮となる。接戦ゆえにウイニングランは不可能。勝つのは東大か、慶應か ― フィニッシュレーンに姿を現したのは種市、そしてすぐ後ろには桃井の姿が。だが、そこには勝負を決する差がついていた。わずか数秒差で東大が二連覇を勝ち取った。


レース後、東大のリレーメンバーである、佐藤、殿垣、種市にインタビューを行った。


―どのようなレースだったか教えてください。

佐藤:序盤で集団を引き離した感触があったが、10ポでミスをしてしまいました。ただ、このミスであれば抜かれていてもまだ巻き返せえると思い、後ろに控えている2人も強いので、集団に追いつきさえすれば何とかなる。と思ってあきらめずに全力で走りきれたのがいい結果につながったと思います。

殿垣:1走の佐藤が後ろと結構離してくれたので、想定通りの展開で、いつも通りの自分のレースを使用という気持ちで出走しました。前半の第一中間までの回しは冷静にいつも通りできたが、後半のゆるいエリアはミスをしてしまいました。昨日(インカレミドル)もそのエリアでミスをしたので、今日も道を使うなど慎重に行きましたが、それでもコントロール手前でうろうろしてしまったというところです。終盤のロングレッグでは、全部のパターンのコントロールを見てしまうなどのミスをしてしまいました。それでも後ろとは差があるだろうと思い、気持ちを切り替えリロケートし、(会場の)応援が聞こえる方向に走りました。

種市:8番コントロール3分半ミスしてしまい、後ろに東北大のトリムが見えてヒヤッとしました。そこからビジュアルの1つ前のコントロールで桃井が見えて、そこで(慶應に)抜かれていることを知りました。ビジュアルの1つ前からは桃井と一緒でしたが、ビジュアルで残りの回しを見て、ビジュアル一つ後の沢に入るところで勝負を決めるしかないと思いました。ビジュアル後にコンパスを振って、パンチしてからはもう全力で走りました。頑張って走って何とか逃げ切った、力が残っていてよかった、というところです。

―観戦側からは、例年よりも難しいコースとの声もきかれましたが、いかがでしたか?

殿垣:難易度としては、前日のミドルが難しかったのでそれよりは簡単になるとは考えていたが、チェンジオーバーのときに(1走の佐藤から)「難しい」と言われ身構えました。ただ、難しいコースでも対応できるようには準備してきたので、その成果が出せて良かったと思います。

―昨年に引き続き選手権リレーの連覇となりますね。

佐藤:今年1年間、このメンバー3人だけではなくて、大橋や、最終年度で勝負をかけてくる4年生などを含み、OLKとして切磋琢磨して強くなってきました。今年1年間で育ったOLKのみなさんに、これまで成し遂げていない4連覇を、今後を託していきたいです。

種市:個人的には選手権リレー4連覇をかけて走った2年前のレースが印象に残っていて、そのときの負けた景色が今でも鮮明に残っています。それが、自分が選手権リレーに懸ける原動力になっています。今日の最後の競り合いでも、それを思い出しました。来年以降の強い東大を作る原動力となれたらよい、と思っています。

―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます!

 

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男子選手権の部優勝:東京大学

準優勝は慶應義塾大学。昨年の3位がこれまでの最高順位であり、準優勝はそれを上回る記録となったたが、東大に競り負けたのは悔しさが残る結果となった。3走の桃井は「昨年4月にリレー優勝という目標を掲げ、いままで以上に団結して頑張ってきました。それにより、今日のレースも頑張れたと思います。自分のために走る昨日の個人戦では、登りとか手続きとかで甘えが出てしまいましたが、今日はチームとして走ることを意識し、弱った時の力になりました」と話していた。また、2走の上島は「レース展開は、1走の清水にはそんなに気負わずにつなぐことを意識して走ってほしいと伝え、2走の自分が上げて、後は桃井に任せるという作戦でした。その意味では理想の展開であり、チームメイトを信じて走れたのが良かったと思います。ただ結果については、前年までは入賞して嬉しい、という感じであったが、このインカレでの優勝を目指してきた中で負けたのは悔しいです」と話していた。

3位には横浜国立大学が入った。前日のミドルで優勝した伊藤樹が、リレーでも絶好調。全選手で唯一39分台という異次元のタイムを叩き出し、2走終了時の5位から順位を押し上げた。

入賞順位には、東北大学名古屋大学京都大学と続いた。

 

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男子選手権のコース

女子選手権の展開 ~筑波大、優位に戦う~

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女子選手権スタート!

女子選手権は、10:10スタート。1走はGPSを見ていると筑波大学(宮本和奏)が抜き出ているように見えたが、実際はGPS装着がなかった大阪大学(出田涼子)が筑波大学10秒少しつけてトップでチェンジオーバーした。筑波大学フェリス女学院大学(村田茉奈美)が僅差で続く。そこから3分弱遅れて、千葉大学(森谷風香)、立教大学(木村るび子)、東北大学(高橋ひなの)がそれぞれ10秒程度の差で通過した。

 

2走になり、気が付くとGPSの画面から筑波大学(山岸夏希)の姿が消えており、会場のGPSスクリーンでは東北大学(伊佐野はる香)がトップを走っていた。第1中間通過のアナウンスも、東北大学がトップ通過と報じた。いつの間に東北大が抜いたのか、筑波大はどこに行ったのか、にわかに両大学の陣営がそわそわしだした。2走も中盤に差し掛かったころ、急遽、GPSスクリーン上で筑波大のマーカーが東北大の前方に出現する。やはり、GPSの不具合だったのか。筑波大は優位にレースを進め、2位の東北大とは3分開いた状態で3走にチェンジオーバーした。

 

筑波大学3走は前日のミドルで優勝した増澤すず、対する東北大学3走は準優勝の髙橋友理奈。前日の頂上決戦と同じ顔ぶれでの戦いとなった。3走で筑波大学東北大学の優勝争いになるのは2年前のマキノインカレ以来。当時は東北大が優勝したが、しかし、今年は筑波大に付け入る隙が無かった。増澤は後続を全く寄せ付けず、個人でも全選手2位のタイムでフィニッシュ。筑波大はここ数年優勝候補に挙げられていながら、なかなか優勝を手にすることができなかった。今年ついに、2002年度以来、16年ぶりの王座奪還となった。

 

レース後、筑波大のリレーメンバーである、宮本、山岸、増澤にインタビューを行った。

―どのようなレースだったか教えてください。

宮本:誰も信用しないで自分のレースをするが目標で、それが達成できた気がします。いい位置でつなげられたと思います。

山岸:自分は人に惑わされるタイプですが、今回はすぐトップに出られたので、他の選手に会わずに自分のペースで淡々と走ることができました。

増澤:後ろとの差が分からない状態でスタートしたので、2月の山リハみたいに怖かったんですが、「落ち着いて慎重にいけば勝てる」ということが昨日のミドルで分かっていたので、今日も昨日のいいイメージを持ったままスタートして走ることができました。

2走の山岸さんが一時、GPSの不具合か何かで速報からも消えてしまう場面がありましたが。

増澤:2走の第1中間が東北、立教と通った一方で、筑波が通過しなかったので不安がっていたら、突然第2中間でトップに現れて、ペナってるのではないかとそれはそれで待ってる間不安になりました。

―観戦側からは、例年よりも難しいコースとの声もきかれましたが、いかがでしたか?

山岸:リレーにしては難易度が高いコースだったので、足が速いだけの1年生に抜かされたりとかはなかったので、経験者に優しいコースでもありました。

―昨年のリレーは悔しい結果となりましたが、今年は見事な優勝となりました。

宮本:今年は、前回のインカレリレーのリベンジを期していました。このメンバーで走れるのは今年で最後でしたし。

山岸:今日、気合を入れすぎて増澤が飛ばないかは不安でした。でも、最後の道走りで競っていれば増澤は抜いてくれるという自信はありました。

増澤:レース中不安になる場面もありましたが「去年の自分とは違うんだ」と言い聞かせて走りました。それぞれが走順にあった、理想の仕事ができたと思います。

―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます!

 

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女子選手権の部優勝:筑波大学

準優勝は東北大学。本大会含めここ4年間の成績は優勝2回、準優勝2回と、強豪校の実力を示した。層も厚く、来年の王座奪還も狙っていることだろう。第3位には立教大学が入った。昨年は秒差のデッドヒートを制しての6位入賞であったが、この難テレインで順位を押し上げ存在感を示した。
入賞順位には千葉大学茨城大学横浜市立大学と続いた。茨城大学の第5位は、2007年度の第6位以来、2回目の入賞であり、大学としてはインカレリレー最高順位の更新となる。3走の勝山佳恵が全選手中トップタイムで順位を10上げて入賞圏内に食い込んだ。勝山は
「(茨城大の先輩である)椎名さんと小川さんと走っているときからリレーではいい結果が出せなくて、先輩が卒業してしまってから女子を入れることから始まり、今回いよいよ入賞することができて、言葉にならないくらいうれしいです」と話していた。

 

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女子選手権のコース

www.youtube.com

 

▼大会公式webサイト

http://www.orienteering.com/~icmr2018/

 

▼成績速報(Lap Center

https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=5128

 

 

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