11月11日、岐阜県大垣市の『時(とき)』を舞台に「2017年度日本学生オリエンテーリング選手権大会 スプリント競技部門」が開催され、男子選手権は種市雅也(東京大学2年)、女子選手権は佐野萌子(京都女子大学3年)が制した。
記事更新:11/12 18時
・提訴結果を反映し、記録の小数点以下を切り捨てました。
・入賞者のタイムを掲載しました。
・メダル獲得数を掲載しました。
大注目! 市街地スプリント
第3回となったインカレスプリントだが、既報(#49_2017年度秋インカレ、開催迫る!)の通り、今年は市街地での開催となった。大規模な大会では日本初のことである。
会場に向かう筆者は、何気ない耕作地の中に突如コントロールが現れたのを見て、「選手はこんなところを走れるのか⁉」と興奮を覚えた。
会場に向かう途中に見えたコントロール
(選手は待機所からのスタートとなるため、競技前に見ることはない)
今回のテレイン設定の仕掛け人は、ご存じYMOEの山川克則氏。実は出身が大垣とのことで、地元出身の山川氏だからこそ実現できた渉外ともいえそうだ。
一方で、市街地ならではの運営の難しさもあったようで、例えば、併設大会のプログラム3.12節「その他」によれば、「市街地スプリントのため、参加者と接触する可能性のあるバスが通過しない時間帯でしか競技ができない」「選手権の会場の使用可能時間が午後からであり、日没による地図の視認度の差をなくすため、選手権の時間が正午過ぎとなる」など、スケジューリングにも苦慮した様子が伺える。
選手は、ロング競技のトレーニングイベント会場からバスによりスタート待機所まで移動し、他の観戦者からは隔離措置が取られる。スタート待機所に向かう選手は、オフィシャルや他の選手と談笑したりと、和やかな様子を見せていたが、スタート待機所では緊張感漂う姿を見せていたのかもしれない。
スタート待機所行きのバスに乗るために招集される選手・オフィシャル
スピードは想定以上、女子選手権
女子選手権コース図(観戦ガイドより)
女子選手権は2.9 km、登距離34 m、優勝設定時間14:40のコースであった。このうち、中間想定通過は8:40であったが、4番手スタートとなる増澤すず(筑波大学2年)が、早速想定を上回る8:30で通過した。増澤はそのまま14:00という、優勝設定を約40秒上回るタイムでフィニッシュ。好成績が期待されると同時に、なかなかこのタイムは切られないのでは、という予感もさせた。しかし、後半、佐野萌子が13:39と、増澤の記録をさらに約20秒塗り替えた。当初の優勝設定を約1分上回っており、単純計算では、佐野のスピードは4.7分/kmということになる。
レース後、佐野にインタビューを行った。
―どのようなレースでしたか?
佐野:割と立ち止まることがなく、スムーズに走れた。レース中は前の女子選手1人しか会えず、自分が速いかどうかとか分からずに一人旅をしていた。フィニッシュ時に記録を読み取った際、計センの役員が「はやっ」って言ったので、その反応にむしろ驚いた。
―難しかった場所、苦労した場所等はありましたか?
佐野:ビジュアルがいつも苦手で、これまで会場の盛り上がりも受けて地図が読めなくなることが多かった。1年生のときは立入禁止を意識しすぎてスピードが出ず、2年生のときはビジュアルで失格だった。今回も、ビジュアル区間の12→13などは「ここに入っていいのか」とかとても不安になった。だが、10→11の長い道走りで会場周りの地図が読めていて、そのあたりは余裕につなげられた。
―市街地スプリントだったが、対策等はしてきたのでしょうか?
佐野:もともと走るのは好きだったが、今回は特にストリートOの練習をこなした。また、JWOCも街中でのスプリントがあったが、そのときの結果が良く、それも今回のレースに対するいいイメージにつなげられた。
―優勝しての感想をどうぞ。
佐野:今までスプリント強化指定選手とかJWOC日本代表に選ばれたりしたが、大きな大会で今まで結果を残せてなくて、やっと成長した姿を見せられてよかった。
―明日のロングに向けて一言どうぞ。
佐野:ロングに対しても対策をこなしてきた。体力には自信があるので、この勢いで明日も走りたい。
―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます!
なお、京都女子大学の個人戦3位以内は、今回の佐野の優勝が初めてとのことである(これまでは、1998年度インカレショートの4位入賞が最高位)。
(ビジュアルを駆け抜ける佐野の様子は、本記事の表紙写真を参照のこと)
激闘! 男子選手権
男子選手権コース図(観戦ガイドより)
男子選手権は3.7 km、登距離44 m、優勝設定時間14:00のコースであった。
競技開始後は、高野兼也(新潟大学4年)が14:50、角田貴大(横浜市立大学4年)が14:43の好タイムをマークする。後半、シード選手の松尾怜治(東京大学4年)が14:28のタイムで1位を塗り替えたが、次のシード選手である種市雅也が14:02と、松尾を大きく引き離して優勝した。ほぼ優勝設定時間通りのタイムということで、単純計算では、種市のスピードは3.8分/kmということになる。事前記事を書いていた際には「こんなタイム出るんだろうか」と考えていた筆者であるが、種市を含む、学生たちの実力の高さに驚いた。
レース後、種市にインタビューを行った。
―どのようなレースでしたか?
種市:ずっとスピードを出して走ることを求められるコースで、すごくきつかった。最後の道走り(15→16)で腹筋がつらかったが、会場からの応援が聞こえてきてがんばれた。
どのレッグも走りやすいルート…くねくねしたりとか出戻りとかしないルートを選んで走った。例えば、9→10などは長いけど走りやすいルート(観戦ガイドで言うところのDのルート)を、自信を持って選んだ。
ME9→10(観戦ガイドより)
―今年のスプリントは優勝を目指していたのでしょうか?
種市:昨年のスプリントは、入賞を目指した結果の3位だったが、優勝するには初めから優勝を目指さなければならないと考え、優勝を目標に練習してきた。
―具体的にどのような練習をしてきたのでしょうか?
種市:先輩が作ってくれた、本番に近い地図を見たり、テレインをストリートビューなどで研究したりしてきた。道がくねくねしている本番の雰囲気に慣れるために、駒場の街中の地図で、自分でコースを組んで走ったりもした。
―優勝しての感想をどうぞ。
種市:ゴールしてびっくりしたというのが正直なところ。ミスは無かったが、もっと早いペースで走っている人がいるかなとも思っていた。優勝して嬉しい。樹さん(伊藤樹:横浜国立大学3年)に勝とうと思ってずっと走ってきたが、ようやく勝てた。
―明日のロングに向けて一言どうぞ。
種市:明日は入賞を目標にしている。一番近くで対戦してきた先輩でもある、松尾さん(松尾怜治:東京大学4年)に勝ちたいと思っている。
―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます!
ビジュアルを駆け抜ける種市
明日は関ケ原の地にて、ロング・ディスタンス競技部門が行われる。佐野と種市が、明日も勢いを見せつけるのか、一方、本日のリベンジを狙う選手も多いことだろう。
明日行われる決戦からも目が離せない!
成績速報(11/12 18時更新)
インカレスプリントの各校獲得メダル数(11/12 18時更新)
4枚…東京大学
3枚…筑波大学
2枚…名古屋大学
1枚…横浜市立大学、新潟大学、京都女子大学、横浜国立大学、茨城大学、東北大学
春インカレ後に表彰される「山川杯」では、秋春インカレのメダル数の合計数で1位となった学校が表彰される。
インカレスプリントの一コマ
全大学に先んじて行われた、京大京女の円陣
筑波大学の円陣
早大OCの円陣
レース後、地元メディアの取材に応じる香取瑞穂(立教大学1年)
最終コントロールからの直線で繰り広げられた、
渡邊寛希(金沢大学1年)と瀬川出(東京大学4年)のデッドヒート
▼インカレスプリント・ロング2017
http://orienteering.com/~icsl2017/index.html
▼IC2017 sprint - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=INZFPeAMNSA
[Writer:yi+]