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#73_6月の風になる - 第40回東大OLK大会 兼 東日本大会

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6月3日、群馬県渋川市の『赤城 -悠久の森 響く天聲-』で「第40回東京大学オリエンテーリングクラブ大会 兼 東日本大会」が開催され、M21Eクラスは寺垣内航(京葉OLクラブ)が、W21Eクラスは稲毛日菜子(京葉OLクラブ)が制した。

 

参加者も運営者も挑戦する大会

本大会で40回目を迎えたOLK大会。今までも多くのことに挑戦してきた大会であるが、今回は公認大会(さらに東日本大会でもあった)、World Ranking Event (WRE)にするなど新たな試みが見られた。英語での要項・プログラムに加えて、掲示物にも英語表記がされていた。会場アナウンスが英語で(中国語も?)行われているのを聞いて、驚いた人も少なくなかったのではないだろうか。また広々とした会場そのものを印象的であった。会場は地元の方との日程調整の会議に出席の末、譲っていただいたという。本当はプロジェクターを使ってステージ上でルート解説をしたかったとのことであるが、これは来年以降に期待することとしよう。

本大会では大型バスでスタート地区への移動があり、これも近年なかった試みである。同時に何台もの大型バスで移動し、本当にたくさんの参加者がバスの停留所からスタート地区へ列をなして歩いている光景には思わず笑ってしまった。本当に大きな大会だと、わくわくさせられた。同じく赤城で行われた31回大会でも同様のバス輸送が検討されていたそうだ。当時の運営者だった大先輩からも驚きの声を聴けてうれしかった、とのこと(大会責任者 高見澤談)。またかつての大会の反省を活かし、バスが道を間違えないように必要箇所に運営者を配置し、バスにも運営者を乗せるという工夫が光っていた。

バスの停留所からは地図が配布され、スタート地区への移動がウォーミングアップエリアとして提供された。これも近年の東大OLK大会にはなかったことである。赤城での大会は実に5回目であるが、実は東大OLK部内では本大会以前の地図は8m間隔コンタであるといううわさが立っていた。ウォーミングアップエリアの地図のそのコンタ間隔を見て、大会地図が正確であることを予感させた。本大会では、レーザー測量された基盤地図情報をもとに修正され1:15000の縮尺の地図でもA4いっぱいに描かれている。5月に行われたKOLC大会の細かい表現の地図にも圧倒されたが、これだけの広大範囲の作図を描き切ったことは、KOLC大会とはまた違った「圧巻」の一言である。東大OLK大会は大学3年生が運営中心学年であるが、最上級生も作図に多大に貢献したとのことだ。

さて肝心のレースであるが、まず目につくのはコースの多さだった。本大会はなんと全34コースあり、各々が自分のクラスでのコースを楽しんだことだろう。コースを組み切った競技責任者の種市(東京大学3年)は、組むことはもちろん、円切りをしたりコントロール数を管理したりすることが苦労した点だったとのこと。赤城がフラットなテレインであることもあってか、M21E 11.8km 優勝設定90分、W21E 7.7km 優勝設定80分と他の大会と比較するとタフでロングらしい設定であった。種市は、M21Eは12~13kmに設定したかったそうだが、試走をしてそれはなくなったとのことである。上級者コースでは、白く、長い直進ができる南の新規エリアがふんだんに使われており、M21Eの19→20はお気に入りのレッグの一つであると話してくれた。M21Eでは2→3、13→14、15→16の3本ものロングレッグがあった。種市はそれぞれ、集中に欠ける序盤でのロングレッグ、赤城の特徴である平らなエリアを活かしたロングレッグ、メインとなる一番長いロングレッグとして組んだと語る。最後のロングレッグは自身の発想に最初からあったわけではなく、試走を繰り返す中で生まれたレッグであったとのこと。真っすぐも左右も考えられるレッグであり、赤城のフラットな面も存分に活かされたお気に入りのレッグであると語ってくれた。男女上位6人ずつのルートを見ると、右を選択した人はいなかったが、真ん中と左で割れている。
(コース解説が大会ブログの記事になっているのでこちらも併せてぜひ読んでほしい。
http://comp.olk.jp/40/blog/?p=666) 

このような本格ロングに対しての作戦を伺ったところ、M21E優勝の寺垣内は、「体のキレを感じなかったので、適度な給水・塩分補給やイーブンのペースを心掛けた」W21E優勝の稲毛は「特別なことはしていない」と語る。東大OLK大会は実は長らく学生の優勝がない。優れた体力水準、ナビゲーション能力に加えて、ロングレースに必要な特有の経験値が彼らを支えているのだろうと推測する。寺垣内は「ミスを想定していた。レース全てをすんなりこなせるとは考えておらず、切り替えることを考えていた」と言い、稲毛も「前半がよくなかったが、切り替えのルーティンを行って後半は意識してスピードを出せた」と語った。
また稲毛はOLK出身であるが、「優勝設定タイムを切ったことがなかったので切れてうれしい」またかつて東大OLK大会でゴールの役員チーフを担っていたことに触れて「威信にかけてラスポゴールを頑張った」とも話す。その言葉通り、男子に交じってOKリーグの今回の特別点であるラスポゴール賞を獲得した。

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M21E優勝の寺垣内(Oriphoto撮影)

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W21E優勝の稲毛(Oriphoto撮影)

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M21E 寺垣内のウィナーズルート


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W21E 稲毛のウィナーズルート

チャレンジ精神とホスピタリティ

40周年の大会であったが、その歴史にプレッシャーに感じていたわけではなかったという。それは、本大会の業務そのもののハードルを一つ一つ越えていくことに尽力していたためであり、大きなトラブルなく成功してほっとしていると高見澤は話す。自分たちがメインになって開催する大会は学生生活で1回しかない。目に見えてわかるのは参加者の反応であり、「会場大きい・広い」「バス輸送すごい」といった声や、賞品も多く用意することができ、参加者から「こんなに!」という声も聴けてうれしかったと高見澤は語った。

WREや公認大会に踏み切った理由を聞いてみると、高見澤が参加した国際大会(AsJYOC2017)が面白かったことや、同じ大会に出場した岡本(東大4年)からの提案もあり、海外の人にも参加してもらおう!と思い至り、WREにした初めてのことであり、同じくWREであった『根の上高原つつじ祭り大会』の運営者に教えてもらいながら準備を進めていったそうだ。 

学生大会が相次いで公認大会になっているが、学生同士示し合わせたことではなく、要項を見てびっくりしたとのこと。例年OLK内では、公認大会にするか話題には上るが、今年は実際にチャレンジするに至ったという。このところ学生大会に気合が入っていると感じる参加者は多いのではないかと思う。普段はオリエンテーリングで競っているライバル達が、楽しそうな大会を開いていたら、負けたくないという気持ちも働くと高見澤は語る。直前の東工大大会やKOLC大会にも刺激を受けたそうだ。今年度はさらに早大OCとKOLCのコラボ大会、さらには西日本大会に名乗りをあげた京大京女大会もあり、その流れはしばらく続いていきそうだ。 

OLK大会は、ホスピタリティに溢れた大会だと聞くことがある。例えばゴール後に飴が用意されるなど、今回も随所に見られた。その源がどこにあるか高見澤に尋ねると、高見澤は「毎年継続していること」が一番大きいのではないかと答えてくれた。1年の最初にわけもわからないまま運営を体験し、2年になり各パートの業務を本当の意味で知る。3年次同じパートの業務を行うことも多く、その頃には参加者の求めていることもわかってくる。OLK内にパートごとのつながりもでき、4年生が助けるのだという。このような体制はこの40年の間時間をかけて構築してきたのだろう。その土台があり、40回大会も新しいことに挑戦できたのではないか、と筆者は推測する。豊かな土壌に立ち、彼らはオリエンテーリング界にまた新しい風を吹かせたのである。

 

そして全日本大会へ

さていよいよ今週末(2018/6/17)に全日本大会が迫る。優勝した二人に、本レースをその前哨戦としてとらえていたか聞くと、寺垣内選手は「もちろん全日本大会はターゲットレースである。レース自体に反省点は多かったものの、レースをまとめるイメージをできたことが収穫であった」と語り、稲毛は、「前哨戦としての意識はなく、むしろ全日本にも負けず劣らずのガソリンをもって臨んだ。WREだったので日本人が勝たなければ、という気持ちがあった」と語ってくれた。全日本への意気込みは、寺垣内選手が「今年もOLK大会はいい大会であった。OLKに感謝をしたいと思う。全日本大会も同様にいいコースいいテレインであると思う。こちらもベストをつくしたい」と言い、稲毛選手は「勝つる!!!」と一言で意気込みを表してくれた。

この勢いのまま二人が勝つのか、またロングで学生に勝ち目があるのかなど、楽しみは尽きない。

 

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謝辞:本記事の表紙の写真は運営者に提供いただきました。
   また、優勝者の写真はOriphoto様より提供いただきました。

▼第40回東大OLK大会

http://comp.olk.jp/40/

 

▼成績速報(Lap Center

https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=4619

 

[WriterDeru]