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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#77_椛の湖での頂上決戦、結城と稲毛が制す! – 第44回全日本大会

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617日、岐阜県中津川市の『椛の湖2018』を舞台に「第44回全日本オリエンテーリング大会」が開催され、男子選手権は結城克哉(トータス)、女子選手権は稲毛日菜子(京葉OLクラブ)が優勝した。また、ジュニア男子選手権は岩井龍之介(京大OLC)、ジュニア女子選手権は伊部琴美(名大OLC)が優勝した。 


改革2年目の全日本大会

昨年から全日本大会は公募した大会プロデューサー(前回・今回は山川克則氏が担当)を中心として推進する形式が取られるようになっており、昨年に引き続き、運営にも各分野のプロフェッショナルが集結し、魅力ある大会を作り上げるよう準備がなされた。今回の頂上決戦の舞台は、アジア選手権、インカレ、全日本リレー等、数々の名勝負が繰り広げられてきた『椛の湖(はなのこ)』ということで、大会に対する期待も高まっていた。しかしながら、大会2か月前を切っても要項が発行されないなど、情報公開の遅さは懸念された。あまりにも遅いと「今年の全日本大会の中身は大丈夫なんだろうか…。そもそも、無事に開催されるのだろうか…」という疑念にもつながる。内々の準備には相当苦労した末の結果とは推察するが、それでも日本最高峰の舞台をうたうのならば、この点は何とかしてほしかったところではある。参加者を集めたいという観点からも、大変もったいないと感じる。一方で、大会前に発行された出場クラス選択ガイド(要項1.5)には「超ロングレッグへの憧憬」と題して、そのコース内容に大変期待させるような記載がなされていた。最長レベルのクラスだけでなくあらゆるクラスで大胆なロングレッグが存在することを示唆し、M50Aなど年齢の大会クラスでも「かつて興奮したあのレッグが貴方を待ち受ける」との記載も見られ、来る全日本大会が大変楽しみになる内容であった。これが決め手となって、全日本大会への参加を決めたという声もきかれた。
公開されたコース距離も「M21E:13.7km、優勝設定時間100分」と大変インパクトのあるものであった。昨今の全日本大会で最も過酷な勝負となるのか― 多くの選手が、来る全日本大会を楽しみにしながら椛の湖に集った。

 

ジュニア選手権は岩井・伊部が制す

ジュニア男子選手権は、岩井龍之介(京大OLC)が制した。レース内容について伺ってみたところ「1→2で舗装路に出たところで油断してしまって、2つの池を間違うしょうもないミスをしてしまい、優勝するのは厳しいかなと思っていたが、あきらめずに最後まで走ってよかった。正直、あまりいいレースではなかった。アタックが難しく、綺麗にアタックできたところがほとんどなかった。一方で、ミスをしたときでも、その影響を最小限に抑えられたのは良かったと思う」と話していた。また「ロングレッグよりも、9→10とか14→15とかのショートレッグの方が難しく感じた」とのことであった。地図読み等で対策をして優勝を目指してきた中での結果には嬉しいものではあったが「レース内容としてはいまいちだったと思う。もっときれいなレースができるようにしたい」と今後の活躍を誓っていた。

 

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M20E 岩井のウィナーズルート

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M20E 入賞者

 

ジュニア女子選手権は、現在急成長中で話題となっている伊部琴美(名大OLC)が後続に18分つけての圧勝となった。「直進がずれたり、斜面の方向に流されているなどのシチュエーションなどがあって、ミスをたくさんしてしまったレースだった。△→1は、まっすぐ進みたかったがぐねぐねしたルートになってしまった。優勝は厳しいかと思っていたが、勝ててうれしい」と話しており、完璧では無いレースだったようだが、高い実力を示した。

 

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W20E 伊部のウィナーズルート

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W20E 入賞者

 

稲毛、2017年度の全日本4種目を完全制覇!

女子選手権は、稲毛日菜子(京葉OLクラブ)が後続に12分差をつけ、昨年に引き続き全日本大会連覇を達成した。今回の全日本大会は2018年6月の開催だが、実は2017年度の扱いとなっており、稲毛は全日本ミドル、スプリント、リレーに引き続き、今回のロングと、2017年度の全日本4大会をすべて優勝で飾った。まさに「完全制覇」という言葉がふさわしい。
優勝した稲毛にインタビューを行った。

 

―今日のレースの感想を教えてください。

稲毛:国内のWクラスではかなり長めのコースだったものの、最近Mクラスへの出場や、スカイランニング等の長距離レースを積極的にこなしてきたことにより、体力面では余裕のある走りでした。全体的に、大きなミスのない走りで勝てたのでうれしく思います。

―難しかったレッグや、ミスをしたレッグがあれば教えてください。

稲毛:最も大きなミスが△→1でした。1:15,000の地図が久しぶりだったので、距離感を意識するあまりコンパスワークが雑になってしまいました。ロングレッグは前半の道を走りながらアタックのルートを変えましたが、結果的に良い選択ができたようです。8、9番コントロールのようななだらかな斜面の中にあるコントロールは苦手なので、ルックアップと丁寧なアタックを心がけました。

―先程、体力面では余裕があったこと、大きなミスなくレースをまとめられたこと、などが話にありましたが、そのあたりが勝因になるでしょうか?

稲毛:そうですね。他にも、得意とする思い切った直進からのリロケートと、今回意識した止まってからのアタックが実行できたこともよかったと思います。

―今回、2017年度の全日本完全制覇を達成しました。また、今後、世界選手権も控えていますね。

稲毛:ロングは一番好きな競技なので、勝ててとても嬉しいです。今回の優勝で、ついに本当の全日本グランドスラム?を達成できました。8月にラトビアで開催される世界選手権では、個人競技はロングとスプリントに出走する予定です。スタミナ、スピード、技術どれもまだまだ磨きをかけて、強い走りができるようがんばります!

―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます。

 

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W21E 稲毛のウィナーズルート

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W21E 入賞者

男子選手権、110分以上の激闘を結城が制す!

男子選手権は、13.7km、優勝設定時間100分という大変タフなコースが提供された。大半の選手が2時間を超えるタフなレースとなったが、結城克哉(トータス)が1:54:55のタイムで優勝を決めた。結城も、2017年度全日本スプリントに続く全日本タイトル獲得であり、また、競技不成立となった全日本ミドルも優勝相当のタイムではあり、2017年度は男子選手で最も存在感を放っていたのは間違いない。
優勝した結城にインタビューを行った。

 

―今日のレースの感想を教えてください。

結城:レース内容は正直良くなかったです。2番コントロールで3分ほどミスした時点で、とにかく1レッグずつこなすように頭を切り替えて淡々とやっていました。レース全体での体力の使い方が重要だと認識したレースでした。

―難しかったレッグや、ミスをしたレッグがあれば教えてください。

結城:レース前半(特に2~5)は、ほぼすべてのレッグでミスをしています。内容的に良くなかったと感じています。100分は切れないものの、105分は出したいコースでした。

―レースでよかったところがあれば教えてください。

結城:他の選手が必ず後半失速すると思っていたので、最後まで耐えきって体力配分ができたのが勝因です。それ以外の技術面、読図面は世界選手権までに修正すべき点が多く見えたと思っており、前向きにとらえようと思っています。

―優勝しての感想をどうぞ

結城:個人3回目の全日本大会優勝は結果としてとても嬉しいです。プロセスには満足していませんが、結果は結果として受け止めようと思っています。社会人になって2年間、大会運営に集中して競技から一度離れたことがあったので、結果を残せる走りができるようになったのは素直に嬉しいです。ただ、いまのトレーニング状況で今回のようなレース内容で優勝したこと自体は、オリエンテーリング界としていい状況ではない、と思っています。今日のコースで100分走れる実力を持つ選手が複数現れてほしいな、というのが正直な気持ちです。そして、自分自身も強くなりたいので、もっとトレーニングに割ける時間を増やしたいと思います。

―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます。

 

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M21E 結城のウィナーズルート

 

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M21E 入賞者

 

なお、本日7月4日 19:30より全日本大会を制した結城、稲毛によるレース解説が行われる。中継内容の詳細は以下URLを参照いただきたい。

▼全日本大会選手権者 レース解説中継 - Champion's route
http://champion.bright-compass.co.jp/2018/06/26/zennihon/

 

次期全日本大会プロデューサーは西村氏

全日本大会プロデューサーを担当していた山川氏だが、本大会で任期満了となった。次回以降2年間の全日本大会は、西村徳真氏がプロデューサーを務める。本大会前日のO-Forumでは、西村氏により次回以降の全日本大会についての計画が説明された。それによれば、

・次回からは全日本ミドルとの2日間大会

・秋季開催

を検討しているとのことであった。また、年度の「ずれ」(先にも記載した通り、本大会は2017年度の大会である)を修正し、次回は2019年度の大会となる予定とのことである。
ただし、出場者の年齢制限がある「2018年度の20E(ジュニア選手権)」をどう扱うか、という問題もあり、そのあたりは議論がなされるものと思われる。
来年以降の全日本大会も盛り上がるものとなることを期待したい。
なお、西村氏のO-Forumでの資料は以下に掲載されている。

▼資料集 - NishiPRO
http://nishipro.com/reference.php

 

上林弘敏氏、一日限定の復活

長年オリエンテーリング界のカメラマンとして活躍し、既報の通り引退の考えを示していた上林弘敏氏だが、本大会は上林氏の地元・岐阜での開催ということもあり、1日限定でカメラマン復帰を果たしていた。おなじみの黒装束で、テレイン内や会場でカメラを構える姿を見て、筆者は思わず嬉しくなった。
改めて、長年の活躍に感謝申し上げたい。
また、オリエンテーリングの写真サイトについては、新たに立ち上がった「Oriphoto」が充実しており、本大会でも活躍を見せていた。今後の活動にも期待したい。

▼Oriphoto
https://www.orienphoto.com/

  

謝辞:本記事の表紙の写真はOriphoto様より提供いただきました。また、表彰式の写真は上林弘敏様より提供いただきました。

 

 

okinfo.hatenablog.com

  

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▼第44回全日本大会

http://www.orienteering.or.jp/joc/2018/index.html

 

▼成績速報(Lap Center

https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=4656

 

 

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