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#154_秋晴れの下、東北大のホームテレインに挑戦! - 第43回東北大大会

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11月15日、宮城県仙台市太白区の『ヲドガモリ二〇二〇』を舞台に第43回東北大学オリエンテーリング大会が開催され、M21Aは小牧弘季筑波大学)、W21Aは世良史佳が制した。

 

前日大会の記事はこちら

okinfo.hatenablog.com

 

今年の東北大大会が開催されたのは、テレイン内に太白山を含む『ヲドガモリ』。東北大OLCにとっては練習会で幾度となく使用したホームテレインであり、『太白星』『星が降りた地』などのテレイン名を経て、2007年に開催された第30回大会以来、当地の旧称「生出森(オドガモリ、オイデモリ)」をもとにした現在のテレイン名となっている。なお、この付近には生出(おいで)という地名が現在も残っている。

テレインは全体的に尾根沢がはっきりとした急峻な地形が広がっており、M21A、W21Aのスタート直後に使用するエリアは尾根走りの練習にも適している。一方、北部は比較的ゆるやかな地形が広がっており、異なる顔を見せてくれる。この北部こそが面白いエリアと評する声も多いが、このエリアに辿り着くには密なコンタを10本近く横切る、俗に「壁」と呼ばれる急斜面を越える必要がある。これもまた『ヲドガモリ』名物であり、本大会でも参加者は皆この「壁」を乗り越えることを要求された。本大会に出走した東北大OLCのOBからは「北のエリアに着くまでが辛すぎる。でも、この壁こそがヲドガモリを感じさせてくれる…」「登り切るころには心が無になってました」といった声も聞かれた。

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ドガモリ名物の「壁」(W21Aウィナーズルートより抜粋)

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テレイン内に位置する太白山は非常に特徴的な形をしている

今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの大会が中止もしくは延期を余儀なくされた。東北大大会の開催としても2011年の東日本大震災以来の大逆風となったが、前日大会とともに今年も伝統の大会が開催された。開催にあたっては、もちろん他の大会と同様、会場入場時の検温や消毒等、感染症対策が徹底された。
本大会の準備について、実行委員長の古関駿介、競技責任者の小林哲郎に話を伺った。

※実行委員長 古関駿介、競技責任者 小林哲郎インタビュー

―大会準備、おつかれさまでした。伝統の東北大大会も今年で43回ですが、今年の大会開催について聞かせてください。

古関:コロナとか関係なく当初は9月開催を考えていましたが、競技形式をミドルでやりたいということになり、インカレロングが終わった後のミドルシーズンを狙って11月に開催とすることにしました。

―今年の大会開催のハードルは高かったと思いますが…

古関:新型コロナウイルスの影響で、会場の選定が難航しました。新入生がいなくて、試走戦力が不足したというところも大変でしたね。一方で、この時期の大会開催にあたっては「インカレロングが開催できた」ということが一つの判断基準にもなり、開催に向けた原動力にもなりました。

―本大会では、エントリーに「チケット制」が採用されていましたね。

古関:このご時世、他の大会が少ない状況だからこそ、大会を何とかして開きたいという思いはありました。とはいえ(世間におけるさらなる感染拡大などで)大会中止のリスクもどうしてもある中で、安心して参加してもらえるように、という結果がこのチケット制でした。

―今大会のテレインは、東北大生にとってはおなじみの『ヲドガモリ』ですね。

古関:前回ここで大会を開催したのが7年前で、特に北のエリアでは当時の地図からはヤブとかの経年変化が大きくなっていたので、練習会で使う上でも修正したいという思いもあり、ヲドガモリでの開催となりました。

小林:テレインの構造としてロング競技としてのコースを組むのが難しいというところと、あと練習会で使える1:10000の地図を残したいということもあって、今年はミドル競技としました。今回の地図範囲外についても、大会には使用しませんでしたが地図調査は行っています。

―「おなじみのテレイン」ゆえの難しさはあったでしょうか?

小林:旧地図からの経年変化があるとはいえ、2007、2013年の地図は元々かなりの精度があったので、今年の地図が改悪になるのではないか、今後の使用に耐えられる地図を作れるのかというプレッシャーはありました。北のエリアは地図作成が難しく、大会直前まで修正が加えられました。(大会準備の)最後の方は、北のエリアにマッパー全員が投入されていましたね。

―大会当日となった現在、多くの参加者を目にしてみていかがですか?

古関:ご参加ありがとうございます。コロナ影響もあるのに、こんなに多くの参加者が来てくれて、好評もいただけて非常にうれしく思います。

―改めまして、開催ありがとうございました。このテレインを使って、良い練習も行えるといいですね。

  

W21Aは、世良史佳が、2位に宮本和奏(筑波大学)にわずか14秒競り勝った。世良の1分後に宮本が出走するというスタート順であったが、2人は3番コントロールで出会い、4番までのルートチョイスを世良がミスして宮本が先行したが、北のエリアに突入した8番で再会するなど、お互いの存在を意識しながらのレースだったそうである。世良は「9→10の緩い尾根の直進が難しかったです。登るところやヤブを切らないといけないところ、緩やかな地形など多様な特徴があり、タフなコース中で斜面を直進するレッグもあるなど、難しいコースだと感じました。前日大会のスプリントで大変やらかして決勝に進出できず悔しかったので、今日は雪辱を果たせてよかったです」と話していた。

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W21A優勝の世良史佳のルート

※インタビュー中にあるように、本人は3→4のルートチョイスはミスしたとのこと 

一方のM21Aは、小牧弘季が2位の細川知希(ときわ走林会)を4分弱引き離しての勝利となった。「アタックポイントをしっかり決めて、基本に忠実にやろうと思って臨んだ」という小牧は、大きなタイムロスなくレースをまとめられたという。ただ、スタート直後のルートチョイスでは尾根をたどったが、沢をすぐ降りたほうが早かったかもしれないと振り返っていた。コースについて聞いてみたところ「想像以上にいいテレインで、コースも難易度が高すぎるわけではないが、ナビゲーションをさぼるとミスをしてしまうような設定だったと思います。運要素も少なく、快適にナビゲーションができるコースでした」と話していた。翌週に控える全日本大会をターゲットレースにしている小牧に、全日本大会についての意気込みも聞いてみたところ「全日本大会と今日のテレインは全然違いますが、オリエンテーリングのリズム、ナビゲーションの手続きはインカレロングのときよりもいい感触がしました。来週の2日間は優勝を目指して頑張りたいし、楽しみにしています」と語ってくれた。

また、M21Aと同一コースの「青葉会M21A」クラスでは北見匠が小牧を上回るタイムを出している。『ヲドガモリ』でのレースはあまりにも東北大や宮城学院のOBOGに有利と想定されるため、青葉会クラスとして別のクラスに分けられていた。北見は「ホームテレインでは誰にも負けたくないと思い、気合を入れて走りました。また【東北大大会】では他大学には負けられないという思いがあり、もちろん小牧にも絶対負けられないと思っていました」と話しており、青葉会の意地を見せつける走りをしてくれた。とはいえ、東北大のホームテレインでここまでOB陣に迫るタイムを出す小牧も見事なものである。北見はOB1年目ということで、参加者としての東北大大会は初参加となったが、後輩の運営に対しては「とても手慣れた運営で、コースも地図もクオリティが高いものを提供してもらえて、大変楽しかったです。ヲドガの楽しいエリアをふんだんに使ったコースで、終始楽しくオリエンテーリングができました」と話していた。

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M21A優勝の小牧弘季、青葉会M21A優勝の北見匠のルート

 

コロナ禍中では数少ないフォレストの大会ということで、また、翌週の全日本大会の調整も兼ねてか、多くの参加者に恵まれた東北大大会。逆境にも関わらず、多くのオリエンティアに貴重なオリエンテーリングの機会を提供すると共に、伝統の灯をともし続けてくれた東北大OLC、MGOLCのメンバーに拍手を送りたい。

 

 

 [Writer : yi+]