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#153_紅葉が燃える超大規模公園を"全集中"で駆ける - 第43回東北大大会前日大会

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11月14日(土)、宮城県柴田郡川崎町 国営みちのく杜の湖畔公園を会場として第43回東北大学オリエンテーリング大会前日大会が開催され、LF(決勝)クラス男子は佐藤遼平入間市OLC)、女子は阿部悠(さつまいも)が制した。


会場となった国営みちのく杜の湖畔公園は、高速道路でのアクセスの良さや仙台市中心部からの距離的な近さもあって年間に70万人以上もの来場者数を誇る東北地方唯一の国営公園であり、特に週末になると多くの観光客でにぎわう。園内いたるところに設けられた花壇では四季折々の花が咲き誇るほか、売店や見学施設なども充実しているため、オリエンテーリング目的でなくても一日満足して過ごすことができること請け合いの施設である。

そんな国営みちのく杜の湖畔公園を舞台に今年の東北大前日大会は開催された。大会の会場として使用されるのは2011年11月に開催された第34回東北大学オリエンテーリング大会以来で、実に9年ぶりとなる。筆者の個人的な所感ではあるが、この9年前の大会を東北大学の中心学年として運営した立場からすると、とても期待値の高い大会となった。

昨今の世情からこの大会も例外ではなく、徹底した感染症対策が施されたうえでの開催となった。参加者は接触確認アプリ(COCOA)のダウンロードとGoogleフォームでの問診票の提出が義務付けられたほか、会場での密集を避けるため運営者からのアナウンスはLINEグループチャットを利用して行われた。学生大会とはいえど、感染症拡大のリスクを伴うイベントであることには間違いなく、平常時の大会運営のタスクに加えて感染症対策が必須となっている。そんな中でも、事前アナウンスや当日の運営の様子から、アイデアとチームワークとでもって競技の進行と感染症対策の両方をきっちり実現している運営者たちの様子をうかがうことができた。

大会当日は全国的に穏やかな秋晴れとなり、会場周辺も日中を通して雲一つない晴天に恵まれた。季節柄、公園内の木々も色づいており、競技者にとってはこうした美しい風景の中に溶け込んで競技ができることも一つの贅沢であったに違いない。

競技はSクラスが1レース、Lクラスでは予選・決勝方式が採られ、2レーンの予選を勝ち抜いた男子上位の計30名、女子上位の計10名が決勝で争う形となった。午前に行われた予選の男子L1レーンでは小寺義伸(東工大OLT)がトップでフィニッシュ。L2レーンでは小牧弘季がトップ想定タイムに近い15分49秒の好タイムで決勝進出を決めた。一方の女子は、L1レーンで阿部悠(さつまいも)が、L2レーンでは上島じゅ菜がそれぞれトップタイムで午後の決勝レースへ駒を進めることとなった。

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決勝スタート前、観戦者に配布された「東北大大会前日大会観戦ガイド」

決勝進出者が確定しスタート地区へ隔離されたのと同時に、決勝進出者以外には「東北大大会前日大会観戦ガイド」が配布され、園内のどこでも観戦可能である旨がアナウンスされた。この公園の大きな特色として、絶妙な高低差があることにより高台からとても広い範囲を見渡すことができるため、観戦場所をうまく選べば一度に多くの競技者の様子を視界にとらえることが可能になるという点がある。まさに観戦向きの公園であるといっても過言ではないだろう。特に観戦者に人気が高かったのは、スタート直後の選手のルート取りを間近で捉えられるエリアと、コキアの段々畑の中を走る選手を高台から見渡せるエリア。付近を通過する選手に声援を送る声や、意外なルート取りに驚く声などを多く耳にした。

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園内を広く見渡せる高台で観戦を楽しむ

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コキアの段々畑にもコントロールが置かれた

この国営みちのく杜の湖畔公園オリエンテーリング視点で見てみると、大きな特色としてはいくつかに分けられたエリアごとに全く異なる課題が提示されるという点がある。例えば、花壇エリアは見通しが良いもののその多くは立入禁止区域であり、その間を道が細かく分岐し入り組んでいるため、では地図上のどこが通れるのかと一瞬立ち止まって悩んでしまう。一方で、建物が立ち並び生け垣が多く存在する古民家展示のエリアでは、ルートは比較的描きやすいものの、複数のルートの中でどれが一番速いのか判断に迷ってしまったり、あるいは視界の悪さからコントロールがすぐ近くにあるのに見落としてしまうようなミスが発生しがちである。さらに、フィニッシュ直前の駐車場エリアには昨今のスプリント競技では新定番となりつつある人工柵が、それも第43回大会にちなんで「43」を模ったものが設けられた。このように、それぞれ異なった特徴を持つ複数のエリアの行ったり来たりを繰り返すコースが用意され、コロコロと変わる風景とともに意識の切り替えの部分で悩まされた競技者も多かったに違いない。

女子は、予選をトップタイムで通過した阿部悠がミスの少ない安定した走りで優勝を決めた。男子は、こちらも予選をトップタイムで通過した小牧弘季が終盤まで優勢であったが、最終盤の人工柵エリアで苦戦したようで、予選時点で2位となるタイムを記録していた佐藤遼平が逆転により優勝を果たした。

男女それぞれの優勝者にインタビューを行った。

(女子優勝:阿部悠選手インタビュー)

- 優勝おめでとうございます。今日のテレインの感想をお聞かせください。

阿部:まずスタートした瞬間からの景色の良さが印象的でした。地図上ではわからないけれど、実際に現地に行ったときにこんな景色なのか!と思いながら走ることがとても楽しかったです。

- なるほど。コースを振り返って、難しかったなと思うレッグはありますか?

阿部:個人的には入り組んだ花壇のエリア(12~15あたり)が難しかったです。

- 確かにこの辺りは道が入り組んでてかなりテクニカルですよね…。

阿部:そうですね。逆に古民家エリア(4~10あたり)では建物が目印になって比較的うまく対応できたのですが。

- ありがとうございます。最後に、今後の目標や今回のレースで発見した課題などがありましたら教えてください。

阿部:今回のレースで初めて予選・決勝方式を経験し、インカレも同様の形式なのでどんどん経験を積んでいきたいです。今後の課題としては、なるべく番号確認にかける時間を減らしていきたいですね。地図の折り方などを工夫することで、もっと短時間で読み切ることができるはずなので、インカレに向けて取り組んでいきたいと思います。

(男子優勝:佐藤遼平選手インタビュー)

- 優勝おめでとうございます。今日のレース・コースの感想をお聞かせください。

佐藤:エリアごとに全く異なる雰囲気を持ったテレインで、最初から最後まで飽きないコース設定になっており非常に楽しかったというのが一番の感想ですね。レッグの長さにもメリハリがあり、特に決勝の△→1については見た瞬間に驚きがあり、とてもワクワクするようなコースでした。

- △→1はコース設定者もコースの肝として挙げているレッグでした。面白かったレッグ、難しかったレッグはほかにはありますか?

佐藤:やはり決勝の△→1が一番でしたが、他には古民家が連続するエリア(4~10)のショートレッグが連続する部分はテクニカルで、スリルがヒシヒシと感じられました。

- 今回の決勝では、決勝に進出できなかった選手が公園中いたるところに立ってレースを観戦している状況でしたが、こちらはいかがでしたか?

佐藤:私自身、もう大学生ではなくなってしまいましたので…インカレを思い出してニヤニヤしてしまいそうになるところを、いやいやレース中だからと気を引き締めながら、というか見られているから引き締めざるを得ないような…そんなレースになりました。

- なるほど(笑)。最後に今後の目標があれば教えてください。

佐藤:最近、学生大会や地方の大会で比較的いい結果が残せている傾向があるので、「学生大会・地方大会といえば佐藤」と言ってもらえるぐらい、これからもたくさん大会に参加したいと思います。

もはやいつ始まったものかは筆者も存じ上げないが、東北大学大会の当日大会は3年生が主管学年として運営をリードする慣習になっている。その一方で、前日大会は毎年4年生が中心となって運営を行っている。この前日大会も、数年前までは開かれる年と開かれない年があったものの、近年では毎年開催され、2日間大会のような形式で開催されるのが定番となりつつある。関東以西など遠方からの参加者にとって、2日間大会となることは遠路はるばる参加することへの大きな動機になりうる。また、前年に主管学年として大会運営を経験しているためか、当日大会とはまた違ったチャレンジングな切り口で参加者を楽しませようとする意欲が感じられる大会となっている。

最後に、運営者代表として実行委員長の髙野智也、コース設定者の山田基生、作図担当者の金子哲士に今回の大会運営について話を伺った。

- 大会運営お疲れさまです。今回の前日大会をここ「国営みちのく杜の湖畔公園」で開催しようと考えた理由がございましたら教えてください。

髙野:いろいろと候補はほかにもあったんですが、渉外を進めていく中でこの日程だとここが当たったような経緯ですかね。

- なるほど。準備を進めていく中で大変だったことがあれば教えてください。

髙野:新型コロナの影響で部室を使用することができない期間が続き、地図印刷やコース設定などが思うように進められなかったことですかね。みんなで集まって作業することがなかなかできませんでした。

- そうだったんですね。そんな中で、どのように準備を進めて大会当日までこぎつけたのでしょうか?

金子:僕の家を利用して作業を進めていました。もろもろの事情で準備に充てられる時間が1~2週ほどしかなく、その期間はもういろんな人が来て、地図の修正をしたり印刷作業をしたりする日々が続きました。深夜1時半ぐらいまで作業が続く日もありましたね(遠い目)。

- それは大変でしたね…お疲れさまでした。逆に、これは楽しかったなという思い出はありますか?

山田:調査帰りにみんなでピザを食べに行ったりしたことが思い出深いですね。普段の生活ではなかなか来ることができない地域なので。

- 近隣のピザ屋さんは協賛企業となっていましたね。最後に、今日のコースを組むうえで何か意識したことなどがあれば教えてください。

山田:△→1でいきなり長いレッグを読ませて参加者をびっくりさせようという気持ちはありましたね。ベストルートはスタートからすぐ西側に伸びる尾根を走るルートなんですが、上位選手でもこのルートは見つけられなかったようで、いいレッグが組めたなと思っています。

- 確かに、決勝を走った選手からは△→1に言及する声が多く聞かれました。素晴らしいテレイン・コースでした。今後の東北大大会・前日大会にも期待していきたいと思います。

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優勝した佐藤・阿部のルート図

 

翌日の東北大大会の記事はこちら

okinfo.hatenablog.com

 

 [Writer : sagapi]