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#162_国内初のオンライントレイルO大会! - 2020年度インカレ協賛トレイルO大会

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突然だが、トレイルOの問題である。正解のフラッグはどれだろうか?

 

3月10-11日に2020年度インカレ協賛トレイルオリエンテーリング大会がオンラインで開催され、岩田健太郎(つるまいOLC)が制した。また、同一クラブ上位3人の成績で争う団体戦東京大学が制した。
(上記の問題は、本大会のステーション2の2問目である)

 

トレイルOにあまりなじみのない方向けに、トレイルOのルールを記載しておく。

~トレイルOのルール~

トレイルOは、地図と地形の照合の正確さを問う競技である。コントロール付近には複数のフラッグ(左から順に、A、B、C…)が設置されており、競技者は地図とコントロール位置説明を頼りに正しいフラッグを選ぶ。ただし、正しいフラッグが無い「正解なし」コントロールも存在する(正解なしの場合は「Z」と回答することが正答となる)。
競技時間をオーバーしない限り所要時間は成績に影響しないが、判断の速さを問うタイムコントロールも存在する。タイムコントロールでは、回答までに要した時間も成績として記録される。

(本大会プログラムより。一部編集)

例年、秋もしくは春インカレの前日に開催されることの多い「インカレ協賛トレイルO大会」だが、トレイルOに挑戦できる貴重な機会であり、この大会で初めてトレイルOに触れる者も多い。トレイルOの技術向上を図る上でも、間口を広げるうえでも、この大会の意義は大きいといえよう。
今年も残念ながら春インカレは開催中止となってしまったが、「インカレ協賛トレイルO大会」はオンライン形式で開催されることとなった。国内では初のオンライントレイルO大会である。
本大会のステーションは6つで、各ステーションにつき5問出題、計30問で競技が行われる。最終ステーションの5問だけが計時され、以下①~③の合計が最も小さい選手が上位となる。

①ステーション1~5(計25問)の誤回答数×60
②ステーション6(計5問)の誤回答数×30
③ステーション6(計5問) の所要時間(秒)

最終ステーションでは、素早く、かつ正確に回答することが求められる。そして、今回の成績のつけ方では、何分も長考するよりは間違えても素早く回答したほうがよい。余談だが、筆者はステーション6で無駄に400秒以上も長考してしまい、下位に沈んだ。


現実であれオンラインであれ、トレイルOの競技中は集中力を要する。全国の参加者がPC越しに京都府内のテレインと対峙した。平日の開催ともあって大会の存在を忘れてDNSとなってしまった者もいたようだが、91名(遅れ回答含む)の争いを制したのは岩田健太郎(つるまいOLC)であった。岩田は30問中間違えたのはたったの1問。同じく1問ミスだった平山遼太(京葉OLクラブ)をわずか2秒差でかわしての勝利となった。

 

トレイルOをしっかり楽しむことができた本大会だが、運営は、伴毅(京都OLC/トレイルO協会)と松橋徳敏(トレイルO協会)のわずか2名で行われたそうである。運営責任者の伴毅に、本大会の運営について話を伺った。

ー運営ありがとうございました。
 今回、オンライントレイルOを運営してみての感想を教えてください。

伴:まず運営して思ったのは、運営そのものはそこまで難しくないなということです。地図調査の範囲も狭いし、限られた時間で膨大な数のフラッグやDP、パンチを設置するという煩雑さもありません。運営経費も限りなくゼロに近いので、安い参加費で提供することができます。全国の皆さんにご参加いただけること、平日に開催出来て他の大会と日程を考えなくていいのもメリットです。

ーオンラインになった分、難しかったことはありましたか?

伴:難易度の調整はリアルより難しいなと感じています。例えば、テレインの写真が当初はうまく撮れたと思っても、今見返すとフラッグ位置が分かりにくいなと思う部分などはあります。
また、今回ということでいえば参加者の実力を想定するのが難しかったです。モデルコースを皆さん割ときちんと解いていたので最初の予定より少し難易度をあげたのですが、結果として苦労された方もいらっしゃったようです。 

ー参加者にとっては、リアルとオンラインの違い、難しさはあるでしょうか?

伴:まず、ステーションが写真であるため距離感が掴みにくいことがあります。しかし、それ以上に私が感じているのはどこから自分が見ているかが分からないことです。
リアルでは目隠しをされても、待機所からどの方向に誘導されているか、どのランクの道を誘導されているかがある程度分かりますが、オンラインではそうした過程がなくいきなりテレインを見せられるというのが技術的に大きな違いと思います。

ー本大会で初めてトレイルOに挑戦した方もいるかもしれません。トレイルOの魅力はどういうところにあると思いますか?

伴:トレイルOの魅力の一つは、今回の大会が単一クラスであったように、競技者の背景に関係なく同じ競技ができるということです。(本大会の)広報文にも書きましたが、フットOでは普段勝てないあるいは競う機会のない相手に技術力で競うことができます。3人集めて団体戦のチームを組む、というのも何の制約もないので、小さなクラブでも比較的集めやすいのではないでしょうか。個人的には、テレインと地図を見比べて純粋に考える、推理するという作業そのものも楽しいと思います。
一方で、計時される場合はより早い(多分フットOより早い)判断を求められます。正確さと速さの両立を求めるとこれもなかなか難しく、はまってしまう一つの要素であると思います。

ー本大会の問題の中で、運営側で特に難しい、勝負を分けると想定していたものがあれば教えてください。また、実際の正解率等を見て感じたことがあれば教えてください。

伴:今回の勝負はStation5、6を想定していました。
Station5は全体的に難易度が高く、順位の差をつける勝負stationとして設定しました。あとはStation6を解く速度です。正解をだしつつ、いかに時間を短くするか。
結果から言うと Station5、6勝負は大体想定通りですが、思ったよりも正解率の低いコントロールもありました(1-5、2-5、4-3です)。
逆に、Station4の1,2に引っかかる人は少なくて、大きな所はほとんどの方が読めていますね。
あとはStation6で時間をかけている人が想定よりも多いと思いました。真剣に取り組んでおられることが伝わってきます。

ートレイルOは、上達したくても大会が少ない、というところはあると思います。練習の場とかあれば教えてください。

伴:トレイルOの上達の機会がない、というのは本来もっと大会を提供すべき側であるこちら側が十分動けていない結果であり、トレイルOに興味を持ってくださっている方々にはまず申し訳なく思います。
現状でいえば、TORUS CUPが最良のトレーニングの場です(TORUS CUPについては、本大会公式サイトの「もっとOnline Trailしたい方へ」という資料を参照)。シリーズ戦の開催そのものは不定期ですが、蓄積された過去問もありますのでそれを解いて復習を繰り返すのがおすすめです。私自身も大体参加していますので、自分ではどうも分からないとか、納得できないことがあれば聞いてください。

ー最後に、本大会の運営を終えて、お話ししたいことがあればお願いします。

伴:現在は速報値ですが、本大会の成績で上位5位までに入られている方は日本のトレイルOトップアスリートの皆さんです。TORUS Cupはじめこの一年弱世界のレベルで戦って、岩田選手はシリーズ戦トップを取ったこともあります。
よく分からない社会人に負けた、と思ってる方もいるかもしれませんが、日本のトレイルOトップの実力を体感していただければそれも一つ良かったのではないでしょうか。
今後も私としてはオンライン、実地を問わずトレイルOの機会を提供していきたいと思っています。今回は私自身もオンライン運営が初めてであり反省することも多いのですが、次回以降はより質の高い大会を提供できるようになると思います。ご興味のある方は今後もぜひ参加して、腕を磨いてください。参加することが腕を磨くことになります。

ー私自身も競技は楽しめたのですが成績は残念なものだったので、ぜひ腕を磨いてみたいと思います。改めて、運営ありがとうございました。

 

 

フットO、スキーO、MTBOと並ぶ、オリエンテーリング4種目の一つであるトレイルO。オンライン環境も活用して、さらなる普及、競技力向上が行われていくことにも期待したい。

 

 

※ちなみに、冒頭の問題の正解は「Z(正解なし)」である。

 

▼大会公式Webサイト(成績もこちらから)
  

 [Writer : yi+]