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#167_白い高原でオリエンテーリングを堪能! - 姫木ミドル

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6月13日、長野県小県郡長和町の『姫木平』を舞台に姫木ミドルオリエンテーリング2021大会が開催され、M21A1は大橋陽樹(静岡OLC/GROK)、M21A2は伊藤元春(東大OLK/京葉OLクラブ)、W21Aは阿部悠(ES関東C/さつまいも)が制した。

 

 

走行可能度が高いことを「白い」と呼ぶのは、オリエンティアにはおなじみであろう。走行可能度が高いことで、地図が緑色に塗られないことに由来する表現である…が、もはや解説するまでもないだろう。
爽快に走れる、見通しがいい…オリエンテーリングをする上で「白いテレイン」にあこがれる者は多い。だが、そんなテレインはどこにでもあるものではない。ましてや、初夏と呼ばれるこの時期、植生は悪化を極め、大会準備においては「使えるエリアがヤブに覆われて減ってしまったー!」という叫びは各地でよく聞かれ、練習会や大会が開催された場合は、参加者がヤブとの戦いに明け暮れるのもまたよく見られる光景である。
しかし、初夏でも白いテレインで開催ということで、各地のオリエンティアが期待を寄せる大会があった。それが、この姫木オリエンテーリング2021大会である。参加者からは試走風景の動画を見て、あまりの爽快さにエントリーすることを決めた」という声も複数聞かれた。かくいう筆者も同じエントリー理由である。ミドル、ナイト、リレーと2日間で3回のオリエンテーリングが楽しめるということもあり、大変な賑わいを見せた。昨年の7月に長野県で開催された霧ヶ峰ミドルは400名の参加人数だったが、本大会の参加人数はそれを超えており、主催者としても想定以上だったという。要因としては、爽快そうなニューテレイン、さらにコロナ禍中では数少なくなってしまった2days大会というのもあるだろう。加えて、本大会のテレイン中には人家がなく、大会中止になりにくいという要因もありそうだ。

大会実行委員長の木村佳司によれば、本大会の開催のきっかけになったのは、1年前の信州長和ロゲイニングだったそうである。地元とはオリエンテーリングでは接点がなかったが、姫木の住人の方が1年前に長和ロゲイニングを開催し、そこで人的交流が生まれたそうだ。ロゲイニングの前日にミニオリエンテーリングも開催しようとした際(残念ながら雨天中止だった)にテレインも非常によいことが判明し、地元とのつながりから本大会の開催に結び付いたということだ。なお、ロゲイニングは来年また開催予定とのことである。
会場からはきれいな林を臨むことができ、爽やかに走れそうという事前の期待をさらに膨らませてくれた。さらに、会場にはキッチンカーも多数登場し、レース後の食事まで楽しみにさせてくれた。

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会場に並ぶキッチンカー。レース以外の要素も楽しい


いざ、テレイン『姫木平』へ。まず、スタートで地図をめくると地図が「白い」。ここまで白い地図はそうそうお目にかかれない。これだけでテンションが上がってしまう参加者も多いことだろう。そして、眼前には期待に違わぬ「白い」林が広がっていた。斜面の角度は緩急あり、一筋縄では行かなそうな予感もさせてくれる。後にコース設定者の小牧弘季にうかがったところ「テレインはこれでもヤブくなった方」とのこと。ここ1か月でシダ等が成長したそうで、春先だったら本大会のコースはもう2~3分は早いタイムが出せただろうと話していた。今回のコース設定についても小牧にうかがってみたところ「テレイン中央の平らなエリアは直進を問い、斜面部は斜面処理…横切るか、斜めに走るか、コンタリングするか…といったところをどうプランニングするかを問う課題を入れた。また、直進を使うレッグについても『エイミングオフをかけたり、小さな地形をアタックポイントに設定する必要があったりするなど、ただ直進するだけではなくアタックにひと手間加えるレッグ』を多くするようにした」と話していた。
また、筆者はレース中に他の選手との交錯が少ないように感じたが、これも小牧の意図通りだったようで「人が正面からぶつからないように、全体の流れはどのコースもなるべく一緒になるようにした」と話していた。

 

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小牧が勝負レッグの1つにしていたというM21A終盤のミドルレッグ

※M21A1とM21A2で微妙にレッグの終点が異なるが、小牧によれば、M21A1の方は直進の方が早く、M21A2の方は斜面をまいたほうが早いそうだ

 

本大会は、M21A1は大橋陽樹(静岡OLC/GROK)、M21A2は伊藤元春(東大OLK/京葉OLクラブ)、W21Aは阿部悠(ES関東C/さつまいも)が制したが、レースの感想をうかがってみたところ、3人とも開口一番に「白くて走りやすくて楽しかった」と話していたのが印象的だった。
そのうえで、大橋「海外にあるようなきれいな森だったので初めから気持ちよく走っていたが、走れるところが多いために体力的には苦しくなった。△→1でコントロールが置かれているヤブがよく見えるのが印象的だった。ミスとしては、いくつか直進のずれがあり、植生のハッチ等で修正した」と話していた。また、小牧が話していた「12→13は直進の方が早い」ということについて大橋は「現地で登り(=直進)は無理だと感じた」と話していた。
M21A2優勝の伊藤「そもそも序盤が苦手なので、レースでは地図をたくさん見るよう心掛けた。2→3は自分が苦手なコンタリング気味のレッグだったが、そこでうまくいったのが印象に残っている。(終盤のショートレッグ群では)12→13のあたりで16まではスピードが出ると見越して先読みしていたが、17まで先読みしきれず少しミスをしてしまった」と話していた。
W21A優勝の阿部「(いつもは)ヤブい場所が苦手でタイムロスすることが多く、思いっきりスピードを出すレースができないが、今回はテレインが白く、総力を出し切ったレースができた。また、レース中に増澤すず選手と並走するシーンがあり、ライバルというかあこがれの選手と並走して競り合う展開があって楽しかった」と振り返っていた。

 

本記事はミドルのみの内容だが、この後ナイト、翌日にはリレーも行われ、白い高原で存分にオリエンテーリングを堪能できる二日間となった。

 

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M21A1優勝 大橋陽樹のルート

 

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M21A2優勝 伊藤元春のルート

 

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W21A優勝 阿部悠のルート

 

謝辞:本記事の表紙写真は、武藤拓王様が撮影したものを使用させていただいています

 

参加者が撮影したレース中の動画

◆ミドル(Yuki Saitho氏 撮影)

www.youtube.com

 

◆ミドル(Takashi Irie氏 撮影)

www.youtube.com

 

◆ナイト(ミドルの日の夜)(Yuki Saitho氏 撮影)

www.youtube.com

 

◆リレー(ミドルの翌日)(Takashi Irie氏 撮影)

www.youtube.com

 

 [Writer : yi+]