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#101_駒ヶ根ロングを制したのは柴沼と増澤! - 2018年度インカレロング

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9月16日、長野県駒ケ根市の『駒ケ根高原』を舞台に「2018年度日本学生オリエンテーリング選手権大会 ロング・ディスタンス競技部門」(インカレロング)が開催され、男子選手権は柴沼健(早稲田大学4年)、女子選手権は増澤すず(筑波大学3年)が制した。

 

スペクテーターズレーンが序盤に存在!

駒ケ根高原ではこれまでも各種の大規模な大会が開催されており、2年前のCC7開催は記憶に新しい。駒ケ根高原で前回インカレが開催されたのは12年前の2006年(ロング)のことだが、本大会は当時との共通点がいくつか挙げられる。まず、例年よりも開催が早く、9月開催という点(インカレ実施規則上は、8~12月に開催することになっている)。会場も当時と同じであった。選手権のコース中にスペクテーターズレーンが存在する点も同じであったが、しかし、コース中における割合は当時とは大きく異なるものであった。スペクテーターズレーンはコースの中間や終盤で設定されることの多いものだが(2006年インカレロングも中盤配置であった)、本大会では男女両選手権でスタートから想定5~6分程度という序盤での配置となった。ロングディスタンス競技では斬新…いや、むしろフォレストの個人競技として斬新な配置といえよう。しかも、スペクテーターズレーンの終点からは、コース内最大のロングレッグ(男子では実走4km超!)が始まっており、選手がおおまかにどのルートを選択したかが会場から見えるようになっていた。これにより、会場からの応援はさらに熱が入り、選手としてもしっかり応援を力に変えて長いコースに乗り込んでいきたい一方、普段のオリエンテーリングでなかなかないシチュエーションに冷静さを欠かないようにしたいところだ。

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会場通過後に現れる超ロングレッグ(観戦ガイドより)
(上図は男子選手権のもの。最速でも踏破に21分かかる)

 

女子選手権は増澤がロングレッグを制し、レースも制す

女子選手権は6.4km、↑230mのコースとなっており、このうち半分近くは2本のロングレッグが占めている。ロングレッグの出来栄えがレース内容を大きく左右するのは間違いない。
第1中間の情報がトラブルにより会場に伝わらず、タイムの動向はスタートから優勝想定で44分かかる第2中間の情報を待つこととなった。第2中間は2個目のロングレッグの終点に位置しているが、最初に通過したのは全体で3番目のスタートであった香取菜穂(千葉大学4年)。第2中間で40:37と、優勝想定を上回る好タイム。最終的に、優勝設定時間に迫る62:14でフィニッシュし、上位の成績であろうと想定された。このタイムを抜く選手は終盤まで現れなかったが、終盤になって増澤すず(筑波大学3年)が優勝設定時間を切る58:32のタイムを叩き出した。増澤は、2本あるロングレッグでどちらも1位のラップタイムを記録して優位に立ち、そのまま最後まで勢いを維持して優勝を決めた。増澤は昨年のロングは準優勝だったが、今年は見事頂点に上り詰めた。準優勝となったのは勝山佳恵(茨城大学4年)。中間地点では4位だったが、終盤の扇状地地帯で順位を延ばした。3位には、前日のスプリントで優勝した伊部琴美(名古屋大学2年)が入賞した。

 

以下は、優勝した増澤のインタビューである。

 

―優勝おめでとうございます。まず、レースの感想を教えてください。

増澤:ロングレッグのルートを迷いなく行けたのは良かったと思います。2本目のロングレッグは、立禁(ゴーカート場?)手前のヤブに当たって、現在位置が分からなくなったが、ヤブ手前の沢に気づいてリロケートできました。その後も、ヤブで方向ずれたりしてスピード出して走れなかったところはありました。

―大きなミスはしなかった感じですか?

増澤:大きなミスは無かったのですが、6→7が一番やらかしてしまい、1本手前の道に入ってしまいました。すぐにリロケートができたのは良かったですが。

―今回、スタート直後に会場を通る斬新なコースセットでしたが、そのあたりはいかがでしたか?

増澤:結構緊張しました。会場通過後すぐロングレッグだったので、ビジュアル前のコントロールをとって、一度立ち止まって途中までロングレッグを読んでからビジュアルに入りました。

―会場の誘導終点では止まらずに進んだようですが、誘導に入る前に地図を読んでいたんですね。

増澤:そうですね。ビジュアル通過後に地図を読むと、焦って冷静にルートを決められなくなると思ったので…。今回、スタートの位置関係から、序盤に会場通るのかな…なんて予感はしていましたが、スタート枠でデフを見たときに、序盤に誘導が記載されているのを見てほぼ確信しました。会場通過中は、色んな人が応援してくれてうれしかったです。

―今回のインカレロングですが、どのような準備をして臨みましたか?

増澤:まず、目標としては優勝を狙っていました。今年が、今の4年生である勝山さんとかとインカレロングで競える最後の機会だったので、絶対に倒したいと思っていました。コーチの方とかに駒ヶ根の地図で1レッグ組んでもらって毎日読んだり、そこで気になるレッグがあったらさらに部内に共有して理解を深めたりしました。あと、インカレ1週間前まではほぼ毎日読図走もしていました。3日前からは走ることはしたものの、地図読みはしなくなりました。

―読まなくなったんですか?

増澤:いくら読んでも読んでもキリはないし、不安にもなるので。これまでいっぱい読んだし、ということもありますし。

―なるほど…。最後に、優勝しての感想を教えてください。

増澤:すごく嬉しいです。小さいミスもしたし納得いくレースではなかったので、レース後は優勝できるとは思っていなかったが、優勝できてとても嬉しかったです。

―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます。

 

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フィニッシュレーンを駆け抜ける増澤

 

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女子選手権 増澤のウィナーズルート

 

男子選手権は終盤に柴沼が逆転!

男子選手権は10.1km、↑390mのコースとなっており、女子と同様に半分近くは2本のロングレッグが占めている。優勝設定は75分だが、スタート時刻が早めのメンバーの中では濱宇津佑亮(東京大学4年)が82:57と好タイムを記録し、会場のLEDディスプレイ上ではしばらくの間後続に大差をつけていた。レース全体も後半に入るころ、大橋陽樹(東京大学3年)が82:48と、濱宇津をわずかに9秒上回り暫定1位が入れ替わる。また、佐藤遼平(東京大学4年)が83:18と、濱宇津には21秒及ばないものの好タイムを出した。

秒差となっていた上位状況だったが、大きく記録を更新したのが種市雅也(東京大学3年)。77:49のタイムで、大橋に約5分差をつけて暫定1位が入れ替わった。この時点で、中間の状況から種市を上回る可能性がある選手は柴沼健(早稲田大学4年)のみとなった。だが、ロングレッグが2本終わった時点での第2中間で、柴沼は種市より3分近く遅れていた。ここからの挽回は厳しいか…とも思われた。しかし、そろそろ種市が勝利するか…というタイミングで柴沼が会場付近に姿を見せる。どちらが勝利するかきわどい状況で、会場の注目を浴びながら柴沼がフィニッシュ。結果は、種市をわずか10秒上回る77:39となり、柴沼が逆転優勝を掴んだ。

2~5位は種市、大橋、濱宇津、佐藤と東大勢が占め、今年も東大のロングの強さが光った。

 

レース後の柴沼にインタビューを行った。

 

―優勝おめでとうございます。レースの感想を教えてください。

柴沼:ロングレッグで大きなルートチョイスがあって、2番目のロングレッグ(7→8)では観戦ガイドで言うところの赤ルート(Dルート。運営側は最速想定)がまず見えましたが、ミスったら怖いなということで青→紫の迂回ルート(Bルート)を選びました。が、走りながら「このルートは遅かったな」と思いました。最後次第で結果が変わるなと思いながら走りました。

―ロングレッグから先の扇状地地帯はいかがでしたか?

柴沼:ベストな感じではなかったものの、9番でミスをした時も比較的早くリカバリできました。9番から先はリズムを変えて、仕切り直しの気持ちで臨みました。

―今回のレースでよかったところ、あるいは勝因はなんでしょうか?

柴沼:純粋に足が動いていて、登りを勢いよく登れていました。あと、いつもは序盤でミスることが多かったんですが、序盤集中して入ることができたと思います。

―今回、スタートして早々に会場を通るコースでしたが、それについてはいかがでしたか?

柴沼:スタートに向かう途中に歓声が聞こえていて、レイアウト的に通るかなという予感はしていました。会場を通った後に、気合を入れて森に入っていく感じが楽しかったです。

―今回のインカレロングですが、どのような準備をして臨みましたか?

柴沼:秋インカレはスプリントとロングですが、ロングの方で結果を出そうと今年に入った時点からずっと思っていて、あまりスプリントの準備はせずに、森の地図を読むことが多かったです。過去の駒ヶ根の地図を集めて読むことを中心に対策していました。同期と、道の長さをあらかじめOCAD等で測って比べる検討などもしていました。それをしつつ、2番目のロングレッグではルート選択をミスしましたけど…。

―優勝しての感想を教えてください。

柴沼:前回の春インカレより前で結果を残せていませんでしたが、自分の中の一番の本命はロングだったので、そこで結果を残すことができて嬉しいです。スプリント、ロングともに会場を使った盛り上げが大きく、選手権を走る身としてはとても楽しく走れたインカレでした。

―ありがとうございました。改めて、優勝おめでとうございます。

 

※フィニッシュレーンを駆ける柴沼の写真は、本記事表紙をご覧ください

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男子選手権 柴沼のウィナーズルート


※謝辞:本記事中の写真はZAK様の動画より切り出して提供いただきました。

▼インカレスプリント・ロング2018
http://orienteering.com/~icsl2018/index.html

▼IC2018 long - YouTube

https://youtu.be/_5Whg84pMeA

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