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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#192_難解なキャンパススプリントを堪能 - 第43回筑波大大会

 

 

2023年9月23日(土)、第43回筑波大大会が茨城県つくば市筑波大学筑波キャンパスで開催された。500名以上の参加者がスプリントを楽しんだ。

 

難解な立体構造

筑波大学つくばキャンパスは広大な敷地を持つ。単一のキャンパスとしては日本最大級の面積を誇る。縦4km×横1kmといったらその大きさがお分かりになるだろうか。

「大学なのか、森なのか。」というキャッチコピーが使われるくらいに森が多く、門もないような開放的なキャンパスである。(ちなみに緑あふれるキャンパスなので、地図と現地の差を極力なくそうと大会1週間前からテレイン内全域で草刈りを行っていたという。)

オリエンテーリングの観点で見るとこのキャンパスの最大の特徴は立体構造の多さにある。ペデストリアンデッキがたくさんあるのだ。

 

前回このテレインが大会で使われたのは2015年のこと。筑波大オリエンテーリング愛好会が体育会になる時期とも重なる。当時もその立体構造を多くの参加者が楽しんだ。

それから部員も大きく増え、このキャンパスでのスプリントは筑波大生のスプリント能力向上に大きく貢献してきたと言えるだろう。

 

運営者に筑波大キャンパスを使うことにした経緯について尋ねたところ、「コロナ禍においては学外者の立ち入りが制限されていたが、ようやく今年その制限が緩和されたため、再び筑波大学を公開するにはいいタイミングだと感じた」「前回筑波大学筑波キャンパスで大会開催をしたのが8年前だったので、久しぶりにやろう!という気持ちがあった」と答えてくれた。

 

午前は難易度の高いエリアを使ったスプリントが提供された。

午前のML1コース

立体構造を存分に活かしたコースとなっている。その一方で15番以降などは使うエリアの特徴や難易度が変化し、競技者に求める課題も変わるようなコースとなっている。

やはり難しいのか2階部分にあるコントロール位置で1階を探している人、その逆も筆者は見かけた。

新しい図式に更新されたことで、相対的に立体構造が分かりやすくなっているように感じた。

ラップセンターのレッグ分析を見ると、ML1クラスでは1→2、9→10、10→11の順に難易度が高い。1→2はスタートして最初に登場する立体交差でこれを読み切れているか、9→10は1階部分に下りないといけないことを理解しているか、10→11も長く続く立体構造部分をルートにうまく組み込めているかでタイム差が出たと思われる。

 

コース解説については以下を参照されたい。 

第43回筑波大大会 コース解説 (japan-o-entry.com)

 

男子は橘選手(ES関東C)、尾崎選手(トータス)がそれぞれML1とML2を制した。WLは森下遥選手(千葉大学)が優勝した。桐嶺会クラスの小牧選手と宮本和奏選手はさすが、これらの選手を超えるタイムを出してきた。

 

ノックアウトスプリントリレー爆誕

 

午後はスプリントリレー競技である。しかし、よく見ると意味深なことにスプリントリレー(ノックアウト方式)、しかも予選決勝方式と要項には書かれている。これはいったい?

 

<ルール>

簡単に言うとスプリントリレーにノックアウト要素(自分に最も適した地図を選択する)を加えたものといえるだろう。

詳細を記載すると以下のようなものである。

【予選】

予選のルールとしては3コースが用意されており、それぞれコースには特徴がある。conpi、hard、longlegと書かれており、どの走順の人に振るのか、適正な人は誰なのかなどを検討する必要がある。

【決勝】

全ての選手がそれぞれコースを(30秒間で決めて)選ぶ。チームのメンバーが同じコースを走る可能性もある。

 

なお、予選では10チームが勝ち残る。桐峯会は3チームまで、女子チームが3チーム入るように考慮される。

午前ほどの難易度ではないものの、よりスピードを求められる。僅かなミスが決勝進出できるかを決める。

 

予選では、ウェーブ1の「ほぼ三十路OLC」チームの橘選手、「結城家とソウルメイト」結城選手が順にゴール、その次にゴールしたのはなんとウェーブ2で3分後スタートの「桐嶺会43期♂」3走小牧選手。やはり慣れている筑波大学OBは強い。続いて「GROK」大橋選手といった順に。

 

女子チームからは稲毛選手の入る「結城家とソウルメイト」、砂田選手の入る「かぼちゃーず」、大野選手の入る「AsJYOC U-16」の3チームが予選を通過した。

 

個人(3枚から1枚だけを選択)では本庄選手が優勝、女子では柴崎選手(新潟大)がlong legパターン5位の快走を見せた。

予選ウェーブ1の1走スタート

 

 

いよいよ決勝。

地図選択では段ボール内でサインをすることで他の競技者から見えないように工夫されていた。

裏側こうなっていたんですよ

 

1走の戦況は大方の予想通り、「桐嶺会43期♂」根本選手がリードする展開、「結城家とソウルメイト」尾崎選手、「いくぞ!さんみいったい!」上妻選手が続く。

 

2走では「桐嶺会43期♂」谷野選手がバテている様子ながら1位をキープ、「いくぞ!さんみいったい!」森選手が2位に押し上げる、「チームスキーO」道坂選手が順位を上げて3位に浮上。「稀によく見る人たち」宮本樹選手が順位を3つ上げて5位に。「結城家とソウルメイト」が女子の稲毛選手を起用しながら4位で耐えるといったところ。

 

いよいよ3走。やはり「桐嶺会43期♂」は強く、小牧選手が盤石の走りで優勝。「結城家とソウルメイト」結城選手はパターン2位のタイムで好走したが優勝には20秒及ばず。3位争いは僅差となり、最後の陸上トラック(ラスポ→ゴール)での争い。「稀によく見る人たち」新田見選手が「いくぞ!さんみいったい!」千葉選手を9秒差で振り切った。「GROK」が5位、「チームスキーO」は6位という結果となった。3走ビジュアル時点では、入賞争いの3チームがほぼ同時に現れたが全員パターンが違うようで別の方向に脱出していったのが非常に面白く、観客が盛り上がっていた。また、実況の他にはteamsを使った定点でのカメラ中継も行われていた。

 

なお、パターンの選択はA:B:Cが8:16:6で最短距離はCとのことである。

 

今回ノックアウトスプリントリレーという斬新なアイデアが生まれたが、参考にしたのはIOLD大会のリレーであったという。何か新しいことをやりたいと思ってリレーにノックアウト要素が加えられたという。筑波大生の企画力に今年も驚かされた。

決勝1走スタート

 

teamsでのテレイン中継

表彰式(表彰されているのはノックアウトスプリントリレー入賞チーム)



コースプランナーの樋口氏に話を伺った。

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Q.

3日前にコースが完成したということですが、コースへの拘りや思いなど教えてください

A.

一度印刷直前段階になり村田さんにOCADの機能について質問したときに初めてコースを見てもらいました。その際に要約すると、調査依頼が発生したり、運営で大変になるポイントがあるとアドバイスを受けたことがコースを全部変更することになった大きな理由です。そこまでに競責・EAチェックや複数回の試走もしてはいたのですが、そこでは指摘されなかった角度からの意見に自分でもはっとさせられました。修正前は、テレインを走り慣れた桐嶺会員を楽しませるコースにしなければいけない、待望されたテレインなだけに期待度も高いということから難しいコースを作成しなければならないという意識が先行してしまっていました。そのため、簡単に言えば過激なコースを組んでしまいました笑。どんなコースがオリエンティアは楽しいと思うのか、筑波大学生ではない人にとって難易度が高くなりすぎないか、リレーでは演出も大切にしたいので観戦者が楽しいのはどんなのだろうか等を意識してもう一度納得のできるもの(=コントロールされたコース)を作りたいと思いました。大会の感想はコースの良し悪しに大きく左右されると思うのでスケジュール的に苦しくなってもこの修正はしなくてはならないという責任が自分の中で強くありました。

 この想いからコース解説に『はじめに』のページを設けました。

 当日は難しかった!でも楽しかった!という一番聞きたかった感想が多く届いてきたので本当に嬉しかったです。難しすぎてスプリントとは言えないなどマイナスな感想ばっかりというケースも修正前ならありえたと思います。午後競技では「演出の筑波」を受け継いだ、競技者も観戦者も楽しめる、盛り上がるリレー競技になったと思います。予選は3つの特徴のコースを組む・決勝は真剣勝負でシビアな戦いというコンセプトを先に決めていたので、それをどのように観戦者も楽しめる形で実現させるかは考えるのは大変でしたがこだわった分、それが上手くはまってよかったです。

 大会アンケートやSNSで沢山の方に良い大会だったと言ってもらえて頑張ってよかったなと思えました。「コースを走り切ってくれてありがとうございます」

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続いて実行委員長の小野氏に話を伺った。

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Q.

大会への思い、感想教えてください。

A.

大会そのものとしては成功だったと思いますが、実行委員長としてその責務を果たすことは中々難しかったというのが率直な感想です。

 自分自身、実行委員長がどういった役割や仕事を持っているのかを最後まで掴み切れないまま大会が終わってしまったという感覚がありました。中々実行委員長としての責務を果たせない中で、同期やその他の部員という皆の支えがあってこそ成功した大会だったと思います。感謝してもしきれません。

 また、大会全体として細かい部分の改善点が散見されたので、次回以降の筑波大大会に必ず活かしたいと思います。伝統の筑波大大会を今後もよろしくお願いします!

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  非常に「凝った」大会になっていると同時に運営者が楽しくやっているのが印象的であった。次回大会はどんなアイデアで参加者を楽しませてくれるだろうか、今から楽しみである。

地図の隅にあるシルエットは合わせると物語があった!素敵な工夫

 

 

大会HP:
第43回筑波大大会 | Japan-O-entrY
Lap center:
第43回筑波大大会 午前競技 (mulka2.com)

第43回筑波大大会 午後競技 (mulka2.com)

[writer:yoshi2]