#55_白い森での全日本スプリントは結城・稲毛が初優勝 - 第10回全日本スプリント
11月25日、長野県大町市の『国営アルプスあづみの公園 大町・松川地区』を舞台に、「第10回全日本スプリントオリエンテーリング大会」が開催され、女子選手権は稲毛日菜子選手(京葉OL)が、男子選手権は結城克哉選手(トータス)が制した。
テレインは今回の「全日本スプリント」、翌日の「クラブカップ7人リレー」で初めて使用される『国営アルプスあづみの公園 大町・松川地区』である。テレインの大部分が整備されたA藪からなる公園であり、しかもとてもフラットで、参加者は爽快にテレインを駆け抜けることができる。テレインから見える北アルプスは既に雪化粧を終えていたが、麓のテレインはかろうじて秋のままであった。大会の週に降った雪の影響が心配されたが、大会当日には全く積雪はなかった。
予選はコースプロフィール通り直進主体のコースであり、あづみの公園の整備された白い森を選手は駆け抜けた。男子は予選2組に分かれ各組15位まで通過、女子は一組20位まで決勝通過だったが、エントリーが15人だったため、決勝を辞退した選手を除き全員通過だった。
決勝を控えた待機所では
スタート待機所には選手だけではなく付き添いの帯同が許されていた。待機所は終始和やかな雰囲気であり、仮眠をとる選手、トランプをする選手もいた。
スタート待機所の様子
予選1位通過の選手に予選の出来と決勝の展望について聞いた。
佐藤遼平選手
「通過に余裕があるとは思っていなかった。決勝は予選より難しくなると思う」
尾崎選手
「温存したつもりだったが思ったより消費した。目標は優勝で、中国での修行等、自分の出来る万全の準備をしてきた」
稲毛選手は一言だけ「結果で語ります」とコメントした。
他にも多くの選手に予選の出来と目標を聞いた。
松尾選手(インカレスプリント準優勝)は「目標は1桁。ラフに突っ込むとミスりやすく、意外とテクニカルなコースになるのではないか」とコメント。
伊藤選手、上島選手はインカレスプリントの不出来を取り戻すレースにしたいと回答。
そのインカレスプリントで優勝した種市選手も伊藤選手を意識しているようだった。
谷川友太選手「予選は普通にきつかった。決勝もしんどいと思うが入賞を目指したい」
藤生選手「予選はミスがなかった。だらだら登るのがしんどかった。決勝の目標は特になく、決勝進出できたことが勝利。無心で走る」
竹内選手「そこそこ頑張ります」
森清選手「高校生の時に種市選手が出した10位の結果を越えたい」
などそれぞれの目標を答えていただいた。
女子は金大関係者(山森選手・木村選手・五味選手・谷川選手)が多かったのも印象的で、この中で一番早いのは?と尋ね、せーので指差してもらったところ、山森選手に3票、木村選手に1票入った。
増澤・出田の大学2年生コンビはそれぞれ入賞を目標に掲げた。
山岸選手(前回全日本スプリント3位)は「去年の順位を越えたい。全日本大会に強いところを見せたい」と語ってくれた。
決勝のレースに関しては「真っすぐいけそうに見えて、立禁エリアがあり、ミスをする選手がでるのではないか、レースをうまくまとめたい」(松澤選手)、「よりスプリントらいしいコースになると思う、ベストルートをとりたい」(出田選手)、「ルートチョイスが増えそう」(伴選手・築地選手)といった声が聞かれた。
駆け抜けるスピードスター達
それでは実際のレースを振り返っていきたい。
男子・女子とも実はコースはほぼ変わらず、9番コントロールまで全く同じである。多くの選手が予想していたようだが、1、2番コントロールは建物の階段を利用した細かい読図を要求するものとなっていた。その後森の長い直進があり、5番コントロールで観衆の前にさらけ出される。この後ルートチョイスを問われるレッグが続くので、ここで動揺せずに動作を続けることができるかどうかが求められる。男子は10番コントロール手前にある柵のトラップを読み切れたかどうかが後半の勝負を分けたのではないだろうか。
男子は、インカレスプリント優勝の種市選手が15分を初めて切り、14分台を出す選手がいるものの、しばらくこれを切る選手は現れなかった。その後結城選手がそれを19秒上回る。このタイムはしばらく塗替えられず、いよいよ最終出走尾崎選手との一騎打ちに。
その尾崎選手、観衆の前のコントロール(5番コントロール)で凄まじいスピードでアタック、脱出!!
会場は尾崎選手がトップタイムの更新への期待で沸き立った。尾崎選手がそのままゴールに駆け込み、トップタイム更新&優勝!!かと思われたが……隣接コントロールによる痛恨のペナ。これにより結城選手の優勝が決まった。
結城選手 優勝決定の瞬間
男子が行われた後に行われた女子決勝。増澤選手が15分を初めて切り、その後しばらく15分を切る選手は現れなかった。その後予選2位通過の勝山選手が1分前の選手をとらえながら観衆の前のコントロール(男子と同じ5番コントロール)に現れ、タイムの更新に期待がかかる……と思う間もなく、なんとすぐ後ろに稲毛選手の姿が! そのまま圧倒的なスピードで稲毛選手はゴールし、優勝を確定させた。稲毛選手は2位に1分差をつけての圧勝だった。
優勝した稲毛選手、結城選手よりコメントをいただいた
◇稲毛選手
―優勝に対してひとことお願いします。
「スプリントの公式戦での優勝は初めてなので嬉しい!」
―レース内容はどうだったでしょうか?
「前半頭が働いてなくて微妙なミスやスピードが出なかったのが残念。スプリントはいつもより先読みを心がけるけど、基本やることは同じなので特別な作戦はありません」
―今年度の全日本はこれで二冠。全日本ロングに向けての意気込みをお願いします。
「夢中にオリエンテーリングができてこそ、結果がついてくるものなので、どのレースも全力で頑張ります!」
◇結城選手
―優勝に対してひとことお願いします。
「全日本スプリントのタイトルは初なので、素直に嬉しいです。ミスった感触もあったので、レースに課題は残りますが、結果としては上々だったと思います」
―決勝レース前、尾崎選手を意識しているか伺ったところ、「人を意識するとあまりいい結果にならないので、自分のレースに集中」と語ってくれましたが、実際レース中意識しませんでしたか?
「入りはとても良かったので、気の持ち方としては間違っていなかったと思います。中盤、松下選手にかなり迫っていたので、追いつこうと色気付いた箇所でミスしたので、そこが心残りです。ミスの後はうまく立て直せたのですが、相手を意識せずとも速いオリエンテーリングが僕にとっての理想形なので、今後も同じ気の持ち方で取り組み続けると思います」
―レース内容はどうだったでしょうか?
「コースプロフィールから、立体交差を使ってくること、予選で近くを通った感じと配布されたコントロール位置説明の1番で建物の内側があったので、序盤の建物での立体交差を予測できていました。その上で、序盤は慎重にはいり冷静に読みきってからこなせたので、後半まで落ち着いたペースを保てたと思います。中盤6、7あたりは1分前の松下選手を捉えていたので、追いつこうと色気付いて簡単なはずの8番でミスしました。それ以降はほぼ一人で、最後まで冷静にこなせたと思います。最終コントロール前でトータス面々の声援が聞こえて元気が出ました。ありがとうございました」
優勝を喜ぶ稲毛選手、結城選手
稲毛選手ルート図
結城選手ルート図
▼オリエンテーリングサミット2017in国営アルプスあづみの公園
(全日本スプリント&クラブカップ7人リレー)
http://nishipro.com/7relay/index.php
▼成績速報:予選(Lap Center)
https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=4275
▼成績速報:決勝(Lap Center)
https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=4274
[Writer:Deru]