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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#182_2年越しの全日本スプリントは新潟で開催!~第14回全日本スプリント~

 

6月4日(土)、新潟県新潟市新潟県スポーツ公園新潟県立鳥屋野潟公園鐘木地区を舞台に第14回全日本スプリントが開催された。

 

<待ちに待った全日本スプリント>

前年度の全日本スプリントは昨年2月に奈良で開催される予定であったが、新型コロナウイルスの影響で中止となっていた。その前に開かれたのは2019年10月(福島県で開催)であったから、全日本スプリントの開催は2年8か月ぶりということになる。

 

筆者を含めてスプリント競技をこよなく愛するものからすると、「待ちわびた!」といった感覚だったのではないだろうか。特に前前年・前年のインカレスプリント(無観客で併設もなかった)を走るわけではない社会人からするとこれだけ大きなスプリントの大会というのは久々だったように思える。

 

今回は高野兼也氏のお膝元、新潟県での開催となった。今回使われた新潟県スポーツ公園新潟県立鳥屋野潟公園鐘木地区は過去に新大大会や新潟パークOツアーでも使われたことがある。

 

<予選>

予選は西側の鳥屋野潟公園鐘木地区エリアで行われた。公園は細長く、コースを組むのが難しそうに見えたが、コントロール数多めでスプリントらしいコースが提供された。石畳の道を走るレッグも見られた。

 

予選は各ヒート10位の選手までが決勝進出となり、男子30人・女子20人が勝ち残れる。定評のある選手の多くが勝ち残る一方で、結城選手、寺垣内選手、南河選手、女子では中村選手などフォレスト上位の選手でも予選落ちとなる選手も多く見られた。

 

予選の上位選手を見ると、伊藤樹選手、小牧選手、根本選手、女子では松本選手、増沢選手、稲毛選手など上位常連のメンツに加えて、ニューフェイスも見られた。

 

男子のheat2で予選4位通過したのは梶本和選手。県立千葉高校に所属しており、ジュニアチャンピオンで優勝。今年のJWOC代表だ。高校生で唯一決勝に残った。

 

男子heat3で予選3位通過したのは横浜市立大の美濃部選手。1年生からスプリントとミドルでインカレ選手権を走った選手だ。こちらも今年のJWOC代表。

 

女子heat1では予選4位に樋口選手(筑波大)、5位に松尾選手(神戸大)。樋口選手はインカレスプリントで1年生ながら入賞しており、今年のJWOC代表。松尾選手は足がとても速い選手で標準記録1を切っている。

 

女子heat2では予選3位に桑原選手(横浜国立大)、5位に落合選手(京都大)。桑原選手も陸上出身で走力があり、最近急激に伸びている選手。落合選手は高校時代からオリエンテーリングをやっており、経験豊富な選手だ。

 

<決勝>

決勝の待機所は道路を挟んで南側のハードエコスタジアム周辺であった。4分前枠が道路をくぐるトンネルのそばにあり、スタート直後で観客の前を走る構図であった。この構図は大変盛り上がると同時に、スタート直後から観客の前で走ることになり、選手によっては緊張する構図でもある。

 

コースは北東の池と道が複雑に交差するエリアに行かせた後、真ん中の水路にかかる橋を横断して戻ってきてビジュアルエリアを通過、再度水路周辺を走って会場でのフィニッシュというものであった。

 

ME-FAのコース

WE-FAのコース

※地図画像はliveloxにあるものを使っています。

 

決勝のスタートリストは予選順位の逆順となる。予選速かった選手は後ろの方でスタートということになる。
スタート直後に選手が会場の回廊を通るレイアウトで会場の参加者や現地の人が選手が通る度に拍手で応援をしていた。今回は実況も充実していて、会場が盛り上がる。
コースの回しとしては、東の方の細かいエリアを回した後に長めのレッグで橋を渡って戻ってきて会場のビジュアルを通過。その後会場北の運河周辺を回って帰ってくる。難易度は比較的簡単ながら、ルートチョイスが分かれて、数秒のミスが大きく響くコースだった。特に橋の構造(下部通行可能)を読めているかどうかはルート選択に影響を与えた。

男子は橘選手が良い走りを見せ、16:06のタイムで暫定1位に立つ。その後、多くの選手が16分台の中で、前中選手、長岡選手、二俣選手が15分台を出してこの記録を上回っていく。伊藤樹選手は途中13番コントロールまで1位、ビジュアルでも2位のタイムであったが、後半大きめのミスがあり、4位と悔しい結果となった。優勝したのは小牧選手で一人だけ14分台のタイムを叩き出した。2位の二俣選手とは7秒差の接戦だった。

女子は小林選手が暫定1位に立っていたが、それを圧倒したのが稲毛選手であった。ウイニングを切る走りで大きく差をつけて1位に躍り出る。松本選手、増沢選手、伊部選手などが健闘するも稲毛選手には及ばなかった。稲毛選手はこの1週間後に行われた全日本リレーの結果も含めて、ミドル・ロング・スプリント・リレーの4冠を達成した。

 

(入賞選手の結果)

男子

1 小牧 弘季 0:14:56 筑波大院/ときわ走林会
2 二俣 真 0:15:03 京大OLC
3 長岡 凌生 0:15:25 青葉会
4 伊藤 樹 0:15:42 設楽町/ES関東C
5 前中 脩人 0:15:43 練馬OLC/あざおOLC
6 橘 孝祐 0:16:06 ES関東C

 

女子

1 稲毛 日菜子 0:14:00 練馬OLC
2 伊部 琴美 0:14:48 OLCルーパー
3 松本 萌恵 0:14:52 -
4 増澤 すず 0:15:11 京都OLC/TORCH
5 小林 祐子 0:15:36 青葉会
6 皆川 美紀子 0:15:47 みちの会

※Lap Centerのものを掲載

 

(表彰式の写真)

WE入賞者

ME入賞者

 

<大会後>

本大会終了後にはliveloxというサイトを使って、ルート比較やreplayができるようになっていた。筆者は使ったことがないサイトであったが、かなり使いやすい印象を受けた。

また、本大会を振り返るセミナーもオンラインで後日開催された。筆者は当初「ルートチョイスがあまりないコースだったのでは」と思っていたが、配信を試聴して「こんなルートもあったのか」と新たな発見があった。上位選手にルートを選んだ理由などを聞く様子も見られた。

さて、個人的にこの大会を振り返った際に、すごいなと思ったことを何点かあげる。

まずはスケジュール感だ。大会開催のアナウンスから当日まではわずか3ヶ月ほど。かなりハードなスケジュールである。

次はコロナ禍でこれだけの規模のスプリントを開けたことである。当日は公園内で全日本スプリント大会があることとこれから公園内全域を使って選手が走り回ることを、決勝前に公園の放送でも案内していた。公園事務所と綿密な打ち合わせが行われていたことを感じる。

運営者は新潟周辺の人だけではなく、多くのメンバーが関東から運営していたことも記載しておく。試走や準備などで新潟まで3回ほど行っていたということで頭が下がる思いである。(東京新潟間は車で5時間ほど)


今回の全日本スプリントは今までの地方の県協会が持ち回りでやっていた状態からJOAが管理する状態になって(中止となった2021年の大会を除くと)初の全日本スプリントだった。
スプリントのコースのレベルも上がり、より盛り上がりを見せるように工夫されていた。競技者が真に目指す価値のある大会であったと言えるのではないだろうか。

また、インカレスプリントなどの影響でスプリント競技が日本でも徐々に定着してきたこと、今年からWOCが隔年でスプリントのみになることなどから年々スプリントに対する注目度は上がり、競技者のレベルも上がっているように感じている。
しかし、フォレストであれば全日本以外でも毎年行われている大規模な大会は他にもあるが、あいにくスプリントで毎年行われている大きな大会はインカレスプリントを除くと大変少ない。全日本スプリントが毎年開催されてほしいと願わずにいられないのはこうした背景もあるかもしれない。

さて、今回は2021年度の全日本スプリント大会を2022年度にやった形であったが、2022年度の全日本スプリント大会も開催するということがアナウンスされている。今年度はもう一度スプリントで熱狂することができそうだ。

 

※写真はOriphoto様のものを使わせていただきました。

                                                                                                                  [writter: yoshi2]