6月30日(土)、松下睦生選手(京都OLC/京大OB4年)の世界選手権壮行会が滋賀県竜王町にて開催された。松下選手が日本代表に選出されるのは3年連続3度目であり、今年はスプリントとスプリントリレーに出場予定だ。松下選手と言えば、フォレストでの圧巻の速さが目立っているが、昨年度の全日本スプリント選手権大会でも得意の読図力を生かして2位に入賞するほどの実力も併せ持っている。
ライバル選手でもあり、運営を共にしてきた仲間たちと談笑する松下選手
松下選手が今年はスプリントで参加するため、壮行会もそれに合わせてスプリント競技、さらに予選決勝方式を取り入れるという新たな挑戦を試みた。テレインは、2013年度全日本スプリント選手権大会の開催実績もある希望が丘文化公園・青年の城。青年の城と言えば、2011年度ICMRの舞台でもあり、関西が誇る日本屈指の超微地形難テレインであるが、その一方で青年の城の公園周辺は多数の小径が整備されており、スプリントテレインとしても非常に面白いという特徴を備えている。
今回コースプランナーを担当した平原誉士氏(京都OLC/京大OB1年)も、このテレインの特徴を生かしながら、ルートチョイスと素早い手続きを要求し、スピードをいかに維持できるかをコンセプトにコースを組んでくれた。
また、今回の壮行会のコンセプトとしては、翌日の関西インカレ(滋賀県日野町、グリム冒険の森)と2Daysという形をとることで、擬似関西ICSLとなるように日程を設定した。こうした関西2Daysの恩恵からか、関東から強者の参加も見られ、松下選手だけでなく、関西の学生たちも大いに刺激を受けたことであろう。また、少数ながら近しい先輩方や、海外選手(!!)の当日参加もあった。
久々の友人と会えることもオリエンテーリング大会の楽しみの1つ
当日は、連日予想された雨から一転、湿度の高い酷暑となった。選手たちのコンディションも心配されたが、高い走力を要求される予選では多くの選手がウイニング想定の10分を切るタイムをたたき出しており、非常に心強い走りを見せてくれた。
種市選手のフィニッシュ
予選決勝方式ではあるものの、参加人数の関係から、予選で失格をしなかった選手は全員決勝で戦うという方式にした。代表選手や、若手エリートと同コースを走ることで、その速さやナビゲーションの上手さを実感してもらいたいという狙いもある。予選とは打って変わり、決勝コースではルートチョイスを要求されるロングレッグや、細かい手続きや正確さを求められるショートレッグなど、バリエーションに富んだナビゲーションを要求するコースとなった。
衣笠選手、最終コントロール通過
森河選手、最終コントロール通過
男子の優勝は佐藤遼平選手(東京大学4年)、女子優勝は佐野萌子選手(京都女子大学4年)であった。男子は関東の有力選手が関西テレインにも柔軟に対応する強さを見せる形となり、女子は世界大学選手権代表である佐野選手がその圧倒的な速さを見せつけた。以下がその選手たちのルートである。
佐藤選手、最終コントロール通過
男子優勝、佐藤選手のルート図。「走力的負荷が高い部分、細かい地図読みが要求される部分がしっかりしており、おもしろいコースだった」とのこと。
佐野選手のフィニッシュ
女子優勝、佐野選手のルート図。「ひどいミスをしてしまったけど楽しかった!!」とのこと。
松下選手がどのようなルートをたどったのかも記入してもらった。
松下選手、最終コントロール通過
松下選手のルート図。今月頭の怪我がなかなか治らない上、ルートミスもあったようだ。
そして、壮行会ということもあり、松下選手にインタビューを行った。以下がその内容である。
-本年度の世界選手権での目標をお願いします。
松下:スプリントはチームとしての目標は予選通過なので予選通過を目指したいですが、そのためのステップとしてまずは通過のボーダー+1分の壁(トップ比115%以内)を突破したいと思っています。
-現在の自身の課題と対策をお聞かせください。
松下:もう本番まで1か月となっているため、課題解決というよりは本番に向けたピーキングがメインになります。
ただ、怪我というイレギュラーなものをかかえているため次の課題は何とか解決しようと試みます。
課題:全日本前週の怪我の影響でレース中足元にばかり意識がいってしまいマップコンタクトが明らかに減っている。
対策:普段のトレーニングでも読図走を基本とし(今まで特に意識をしていたわけではないが)普段の感覚を取り戻す。
この怪我の影響でフォレストではまだ普段通りのレースができない状態だが、幸い出場するのはスプリントなので日々のトレーニングで調整できると考えています。
-壮行会の感想をお聞かせください。
松下:何よりも毎年壮行会を開催してもらっていることへの感謝に尽きます。
(社会人クラブで毎年壮行会を開催しているところはほとんどない気がするので)
内容としても斬新な企画があったり、予選決勝のスプリントだったり、普通の大会とは一味違うので毎年楽しみにしてます。
-今後の目標をどうぞ。
松下:目下の目標はトレーニングを継続して代表を目指すことができる環境づくりです。
学生の頃と比較すると計画的なトレーニングができていないと感じているので、長期的なプランニングが可能となるような環境を構築したいと思っています。
具体的な目標としては、もちろん全日本はどの種目も優勝を狙っていて、代表としては来年のWOCミドル予選通過を目標に頑張ろうと思っています。
計画的に努力を継続できる松下選手らしいインタビュー内容であった。明確な目標を持ち、それに向けた努力計画を立て、さらに実行できることが彼の強さの一因であろう。
最後に、せっかくなので京都OLCでの3年間の壮行会運営を振り返って終わりとしたいと思う。
松下選手が初めて世界選手権代表選手に選出されたのは、2016年のことであり、この時は京都市内で開催、目新しいテレインでロマンのあるフォレストを開催しよう!とのコンセプトで、「きぬかけの路」で開催された。フォレストミドル競技(?)に加え、午後の企画Oでは、得点ごとに定員を設ける変則スコアOが開催された。
2017年では、準備期間の制限もあり、京都市内の「双が丘」にて行われた。午前のスプリント競技(?)に加え、またしても新たな企画Oを用意した。指定されたコースを回りつつ、スコアOを行うという形式であったが、これはなかなか改良の余地があった。
そして、今年の2018年では、打って変わって予選決勝方式の本格スプリント競技を提供した。当初の狙いは翌週の関西学連スプリントセレ対策であったが、あまりその効力は及ばなかったようだ。
どの年にも課題や改良の余地は残ったが、「代表選手と楽しくオリエンテーリングをしよう」というコンセプトは一貫して変わっていない。3年間を通して、壮行会では参加者が松下選手に挑戦する図式を崩さず競技の場を提供してきた。
松下選手が世界選手権に挑戦し続けるとともに、京都OLCも新たな取り組みに挑戦していくことになるだろう。
▼松下睦生壮行会2018
https://japan-o-entry.com/event/view/150
▼成績速報(Lap Center) 松下睦生壮行会2018予選/Bクラス
https://mulka2.com/lapcenter/lapcombat2/index.jsp?event=4669&file=1
▼成績速報(Lap Center)松下睦生壮行会2018決勝/併設
https://mulka2.com/lapcenter/lapcombat2/index.jsp?event=4670&file=1
▼松下睦生壮行会2016
https://japan-o-entry.com/event/view/8
▼松下睦生壮行会2017
https://japan-o-entry.com/event/view/53
▼第六回全日本スプリント – Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=oLe02NnGpe0
[Writer:HiT]