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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#108_海を越えた先に待つのは魅惑の難テレイン – 第5回ジオパーク伊豆大島大会

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1020日、東京都大島町の『裏砂漠・奥山砂漠』を舞台に「第5ジオパーク伊豆大島オリエンテーリング大会」が開催され、MEは伊藤樹(KOLC)、WEは伊部琴美(名椙OLC)が制した。

  

日本各地には様々なテレインが存在するが、「今まで走った中で難しかったテレインは?」と質問されたら何と答えるだろうか?

答えは人それぞれではあるが、本大会のテレインである伊豆大島裏砂漠を挙げる者は多いだろう。日本で唯一の「砂漠」が広がるこのテレインでは、似たような見た目をした細かい溶岩地形が広がっており、一度現在位置を見失った際のリカバリーが難しい。本格的にミスをしてしまった場合、見通しが抜群に良い中で途方に暮れるという貴重な体験ができるテレインである。砂漠エリアだけでも難しいのに、一方で、低木が広がり見通しが悪い潅木林エリアも存在しており、これもまた難易度上昇に拍車をかけている。そして、この難しさがテレインの魅力にもなっている。

そんな難テレインで開催される伊豆大島大会であるが、昨年は台風接近により大会中止となってしまった。そのため、参加者にとっても、運営者にとっても、今年の伊豆大島大会はリベンジマッチという様相を見せた。

 

参加者は、大会前日夜の客船、もしくは当日朝のジェット船にて伊豆大島に向かう。海を越えてテレインに向かうという非日常感もまた、この大会の魅力である。さらに、大会後にはNaviTabiによるミニロゲイニングイベントや、大会翌日の合宿イベントも用意されるという充実ぶりであった。とはいえ、船での移動は普段から慣れていない方も多く、また、イベントもたくさんあるがゆえに参加方法を迷うといったこともあり、それらを自分で調べるのは面倒…ということで、大会申し込みの敷居が高くなりがちな面もある。しかしながら、本大会ではおすすめの大会参加パターンが要項にて紹介されており、大会に参加しやすくなるよう工夫がされていた。見事な広報だったように思う。

 

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伊豆大島大会のおすすめ参加パターン(要項より)

テレインが難しいのは先に記した通りだが、今年のコースは特に難しかったという声も聞かれた。MEクラスはいきなり潅木林に突っ込むコースセットとなっており、多くの参加者がここで出鼻をくじかれた。上位3名以外は2時間レース、3時間レースを繰り広げる中で、KOLCの伊藤樹と稲森剛が、共に1時間48分台のタイムを叩き出し、高い実力を示した。

優勝した伊藤は、伊豆大島2年ぶりの挑戦だったそうだが、「2年前は何もわからなくてつぼりまくり、コンタ2.5m恐怖症になりました() 2年越しのリベンジで挑戦する気持ちで出走しました。砂漠エリアは気持ちよく回ってこれましたが、灌木林エリアは際どいところがいくつかありました。海外テレインのようなナビゲーションを楽しむことができて最高でした」と話してくれた。

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ME上位3名のルート(ルートガジェットより)

 

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合宿イベント参加者

 

多くの参加者が難しいテレインでのレースを楽しみ、そして観光も楽しんだ伊豆大島大会。

魅力あるこの大会について、大会後に実行委員長の宮川早穂にインタビューを行った。

 

―昨年は台風で中止になってしまいましたが、今年は無事に開催されてよかったですね。今回の大会開催への思いについて、聞かせてください。

宮川:昨年台風で直前に中止を決めたので、伊豆大島まで来てくださった方々への申し訳ない思いが強くありました。当時は平運営者でしたが、これまで上の代の方々が培ってくださったものを継いで今年リベンジしようと決めました。

―今年の大会運営で、新しくチャレンジしたことについて教えてください。

宮川:強いて言うなら、大会コンセプトを一新したことです。

今回のコンセプトは、「『裏砂漠・奥山砂漠』を堪能してもらうこと」でした。参加者の方々は、「観光、イベント」として来てくれていることは薄々感じていたので、そこにギャップがあって驚かれた方も多くいたかなと思います。でもあえて、「伊豆大島でのロングディスタンス」を用意しました。大好きな大会のひとつである、O-ringenのような大会を伊豆大島で開いてみたかったのです。これまで大切にしてきた地元の方々との共創も継続しながら(ES関東クラブの上の世代にかなり助けてもらいました)、西村さんに拡大作成いただいた灌木林の地図を持って、新たな世代でこのコンセプトのもと大会準備を進めました。ルートガジェット、登録していただけたでしょうか?こんな取り組みも、帰ってからもオリエンテーリングを楽しむためのtipsです。

―レースの内容を見てみて、いかがでしたか?

宮川:先に話したようなチャレンジをした今大会ですが、最大ミス率70%(!)と、苦戦された方が多くおられました。クラス選択を適切なものにしてもらえるようにしっかり促せなかったのは反省点です。ですが、意外だったのは、「めちゃくちゃツボったけど楽しかったです」という声をたくさん聞いたことでした。

競うオリエンテーリングではなく、「自分自身との闘い(アドベンチャー的な側面)」という楽しみをオリエンテーリングに見出だせたのは私自身に、価値観が広がりました。今回、「初めてオリエンテーリングをする」というトレイルランナーの方(ロゲイン経験者)が数名いらっしゃったのですが、彼らが「全然わからなかったけど4時間堪能しました!」と言っていたのは印象的です。

いろいろ考え試行錯誤しながらオリエンテーリングをしていく……多くのオリエンティアが初めてコンパスと地図を手にした時の、「どうやったらうまくまわれるのかな?」と考える過程、そんなわくわく、ドキドキを伝えられたなら、それは願ってもないことです。

―自分も、10年ぶりくらいに大会で途中棄権してしまいました…が、とても楽しかったですし、もし次回があったら今度こそ完走したい! と燃えています。そういう思いが持てるのもまた、この大会の大きな魅力ですね。素朴な疑問なのですが、運営者はこのテレインを慣れですいすい走れたりするのでしょうか…?

宮川:走れません() このテレインは、ふと気を抜くと一瞬でどこにいるのか分からなくなります。プランナーの橋本も、アフターイベントで5分彷徨っています。ですが、集中して、しっかりオリエンテーリングをしていけば、灌木林中央のこぶでも真っ直ぐ当たります。とはいえ、ME2位の稲森くんのミス率6%には感嘆しました。

―なるほど…このテレインでミスなく走れたら、さぞ爽快だろうなと思います。一方で、運営者さえも難しくて迷いやすいテレインですから、普通の大会以上に安全管理には気を付ける必要もありますね。

宮川:リスクマネジメントには気を付けていました。テレインの南端で、メガホンを持ったパトロール隊に「そっち地図外ですよー!」と叫ばれた方もいらしたのではないでしょうか。フィニッシュ閉鎖5分後には、捜索隊(2人ペア/7組)を持ち場に配置していました。おかげさまで、30分以内に全参加者の無事が確認できました。

残念だったのは、携帯電話・ホイッスルの所持を推奨していたにも関わらず、フィニッシュ閉鎖10分後に電話をかけて通じたのは8名中1名だったことです。自然を相手にするスポーツなので、競技者自身の安全確保はもちろん、1年生や初めての方を誘って参加する人は、所持品チェックをし合ってみてください。もちろん運営者としても、まだまだ工夫する余地はあると思っています。

オリエンテーリングの大会で携帯電話を持っていく…というシチュエーションはあまりないですよね。難しいテレインではそういった対応も必要になる、ということはもっと広く知られるべきことかもしれません。一方で、自分はテレインに携帯電話を持っていくと「落としたり、あるいは転んだ拍子に壊したりというのが怖い」と思ったりもします。そういうところに対してもどう働きかけていくか、というところも考える必要がありそうですね。

 

―話は変わりますが、今年は大会の主要役員は若手が占めていたように思います。クラブとしての勢いも感じさせますね。

宮川:今年加入した10名とともに、ES関東Cが新たになりました。上の世代の方々には本当に好きにやらせていただいて、見守っていただいて感謝しかありません。まだまだ模索中ですが、これからも楽しくやっていければな~と思っています。新入会員募集中です!気になる方はこちらまで()

izuoshimaあっとeskantoc.com

―ちゃっかりクラブの宣伝していきましたね()

 運営ありがとうございました。これからのES関東クラブの活躍にも期待しています。

  

▼大会公式Webサイト

https://eskantoc.com/izuoshima2018/

 

▼成績速報(Lap Center

https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=4884

 

謝辞:本記事の写真は運営者に提供いただきました。

 

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