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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#165_この楽しいリレーは幻ではない! – DREAM RELLAY

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3月27日、栃木県矢板市の『矢板日新』を舞台にDREAM RELLAYが開催され、MEはftFaLT(桃井陽佑-清水俊祐-江野弘太郎)、WEはインポスター(阿部悠-池ヶ谷みのり-坂巻朱里)が制した。

 

※執筆が大変遅くなり申し訳ありません

 

どこの大会もそうであろうが、コロナ禍中における大会運営ハードルは高い。特に、地元渉外と会計に関しての難易度は高い。地元渉外については言わずもがな、会計については参加者数の減少により赤字のリスクがつきまとう。参加者側としては「大会が中止になったら交通費が…」「そもそもコロナが怖い」という理由で大会参加をしにくい状態にある。このご時世に大会を開催してもらえるのは本当にありがたいのだが、運営者がなんとか危ない橋(=赤字)を渡らずに済む方策はないものだろうか。「積極的なエントリーを!」とは残念ながら呼びかけづらいところもあるが、参加者としても可能な範囲でなるべく運営の助けとなるように心掛けたいところである。

さて、本大会は、DREAM RELLAYという大会名だが、その実態は第10回KOLC大会である。新型コロナウイルス対応のため年始早々より緊急事態宣言が発令され、3月は宣言が解除されるか否かという大変微妙な時期であった。その辺りの事情も大会名変更につながっているといえよう。大学クラブにおいては、大会運営ハードルがさらに高くなる要因として「大学からの許可」がある。KOLCの学生は大学からの活動自粛要請を無視してこっそり運営しているわけではなく、本大会の準備・運営には大学から正式に許可を得て参加しているが、許可を得る手間は通常の大会運営よりも負担となっている。地図調査に人員を集めるだけでも一苦労ということで、無事に大会開催しただけでも十分と言えそうだが、運営者は「学生大会らしさ」もしっかりと出して会場を盛り上げていた。会場に着くと、そこには謎の装飾が…盆踊りの会場だろうか?

 

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会場の装飾

そう、これは本大会の企画の1つである「日新音頭」を意識した装飾だ。大会公式Twitterで日新音頭をご覧になった方も多いだろう。♪日新、日新、矢板日新 アッソーレ というメロディーで踊るアレである。なんとも言えないシュールさと、突如始まるラップなど、見れば見るほどくせになる要素が満載となっている。森の中に装飾、という今までありそうでなかった形で、競技が始まる前からわくわくさせてくれた。

このように、多くの苦難を乗り越えて開催に至ったDREAM RELLAYだが、その運営について実行委員長の伊藤頌太に話を伺った。

―大変な状況下での運営、ありがとうございました。今回の運営で大変だったところを教えてください。

伊藤:コロナの影響で、大学への運営の申請を出しながら行うのが大変でした。試走や直前準備も申請しながらやっていました。ミーティングはオンラインがほとんどだったので、開催しやすかった半面、コミュニケーションは難しく感じるところもありました。

―今回はリレーという競技形式ですね。

伊藤:(リレーにしたのは)僕のこだわりです。自分が1年のとき、インカレリレーを見てみんなが熱狂しているのを見たりとかもして、リレーならではの体験価値は大きいと思っています。そういう大会を開ければと思って、リレーをやりたいとずっと言っていました。

―本大会の開催にあたっては、地元支援も大きかったと聞きます。

伊藤:本大会の会場も私有地、会場までのルートも私有地の庭先を通過させていただいています。駐車場も、企業様の駐車場をお借りしています。(利用申請したのが)緊急事態宣言下だったので、市内の施設がほとんど使えませんでした。その中で、こうやって会場や駐車場を貸してくださった地域のみなさまには深く御礼申し上げます。

―いろいろと制約が多い中ですが、学生大会らしさも出せていて素晴らしいと思います。

伊藤:会場の装飾、クリアファイル、日新音頭など、仲間が考案してくれました。昨年度の大会は「筏場体操」がありましたが、残念ながら中止になってしまったので、そういった意味でも踊りとかも楽しくできればと思ってました。仲間には感謝しています。

―ところで、本大会の名前は「DREAM RELLAY」ですが、名づけにはどのような意味があるのでしょうか? 特に、「リレー」についてはLが1文字多い気がしますが…?

伊藤:RELLAY…よく見ると「Really」に似てますよね。コロナ禍中でも「本物の」大会を開催しよう。大会とか練習会がなくなっていく中で、本物の仲間とリアルで楽しめる大会にしたい、暗い世の中でも、オリエンティアに夢を与えたい、という思いを込めています。

―なるほど、すばらしいですね。

伊藤:実を言うと、Lが多い理由は渉外責任者がスペルを間違えたのが発端なんですが…(小声)

―(何か聞こえた気がしますが、気にしないでおこう)最後に何か話したいことがあればお願いします。

伊藤:残念ながらインカレリレーが中止になってしまった中で、こういうリレーの機会を設けることで楽しんでもらえたことは実行委員長として大変うれしく思います。この大会にご支援いただいた地域のみなさま、渉外に協力してくだった山川様、イベントアドバイザ―を務めてくださった西下さん、またこの大会にご支援ご協力いただいた仲間、参加者のみなさま、そのほか多くのみなさまに深く御礼申し上げます。これからもオリエンテーリングを楽しんでください。

 

会場には、おなじみYMOE社の山川克則氏の姿もあった。本大会開催にあたり、会場や駐車場の確保等、地元から支援が得られたのは山川氏の力添えによるところも大きい。日本のオリエンテーリング界に同氏が長年多大なる貢献をしてきたのはご存じのとおりであり、コロナ禍中においても「山川ドリーム」にて多くのオリエンティアに貴重なオリエンテーリングの機会を提供し続けてきた。そんな山川氏が、リレーの競技開始時に「やっとリレーができるぞ。リレーだリレーだ」と嬉しそうにしていた(はしゃいでいた、の方が適切かもしれない)のが大変印象的なシーンだった。

リレーのスタートというのは、独特の空気感がある。山川氏だけでなく、その場にいる参加者皆がその瞬間を楽しみに見ていた。コロナ対応のため、大声を出して応援するわけにはいかない、しかし、温かい拍手とともに選手たちがスタートしていった。山中に消えていく1走の選手たち…と思いきや、1人の選手がものすごい勢いでスタート誘導を逆走してきた。何か叫んでいる。「コンパス忘れたぁぁぁ!」だそうだ。その選手は、荷物置き場に向かいコンパスを手にし、またスタートへ向かってものすごい勢いで駆け出して行った。予想外の事態に会場は笑いに包まれ、そして森の中へと思いをはせていた。

 

参加者数の多いMEクラスについて見ていこう。1走は大橋陽樹TALK)が後続を4分近く離して帰ってきた。このまま独走するかと思いきや、2走で小牧弘季筑波大学E)が43:16という、全選手内トップのタイムで筑波大学Eを首位に押し上げる。2走では伊藤樹(あの頃の横浜国立大学)も44:45という好タイムでチーム順位を3位まで上げており、小牧伊藤の2人が格の違う走りをしていた。また、久しぶりのリレー競技だからだろうか、思った以上に各選手のタイム差が大きいように見受けられた。

その中で、3人とも安定して早いタイムを出したftFaLT(桃井陽佑-清水俊祐-江野弘太郎)が優勝を勝ち取った。ftFaLTの3人に、レース内容等について伺ったので紹介する。

―優勝おめでとうございます。まずはレースの感想を教えてください。

桃井: 1走特有の、強い選手が集まる中でのスリリングな集団走を楽しめました。久しぶりのフォレストということもあったかもしれないが、一見、地図上だとうまく行けそうだが、実際ナビゲーションしてみると難しく感じるレッグが多々ありました。ときどき微地形についているコントロールもあって、正確なアタックやルートチョイスが難しく感じました。

清水:自分は並走があまり得意ではなくて、今までの失敗してしまったリレーでは速い選手と同時に出走することが多かったのですが、今回は1走の桃井が集団ではなく一人で継走してくれたので、リレーだけど自分のオリエンテーリングができたという印象でした。1週間前から予想コースとか組んで本大会の対策もしていたので、プランに関しては予想通りでした。レースの技術については、3か月オリエンテーリングしてなかったので丁寧に確実にいくことを心掛けました。体力については、12月の時点でこの大会の存在が決まってたので、緊急事態宣言中も走りこんで備えました。細かいミスはあったがレースは満足できました。

江野:個人的には3か月ぶりのオリエンテーリングでした。春インカレもなくなってやる気もなくなっていましたが、いつも先輩に引っ張ってもらって4年間過ごしてきて、今回も先輩の2人に引っ張られる感じでモチベーションも上がってきて、先輩には感謝しています。本来は運営する側でしたが、参加者として走っていいよと言ってくれて、後輩にも感謝しています。周りに支えられた4年間だと感じた1日でした。最初、筑波の永山くんと4、5番くらいまでは並走していましたが、対策とかもしていたので、落ち着いて入ることができました。

―母校の後輩が開催する大会ということで、入念な準備の跡も伺えますね。

桃井:リレー特有の、自分の感情やオリエンテーリングの仕方のコントロールを重点的に対策していました。2走の清水が「松澤さんのオリエンテーリング道場」(Oマガジンのバックナンバー)を見つけ出し、それをもとに対策を行いました。

清水:本大会には、2年前の矢板で開かれる春インカレで走る予定だった4人のうちの3人で組んでいます。当時もインカレでの優勝を目指して走っていて、インカレがなくなって不完全燃焼だったので、メンバーの2人が社会人になるのを前に、完全燃焼でこの3人でリレーを優勝して終わらせてあげたかった、というのがあります。コロナの中でKOLC大会も延期されてきた中で、慶應のOBとして後輩たちへの感謝の気持ちも込めて優勝をプレゼントしたかった。だからこそ、対策もしっかりして臨みました。

―大会の感想を教えてください。

江野:自分は残念ながら中止になった前回大会の実行委員長でしたが、再走練習会も中止になってしまい、大会を開く難しさを感じていました。その中で、ここまでの大会を開くとは、後輩の成長も感じて嬉しく思いました。

清水:下の代の人たちはオリエンを楽しむ感じの子たちが多く、その「らしさ」が前面に押し出されてて、でも競技性も担保されている素晴らしい大会でした。

桃井:客観的に見ても、コロナで開催があやぶまれる中でしっかり楽しい大会を開いてくださって、ありがたいしすごいと思いました。

清水:今後もKOLCは後輩たちが大会を開いていくと思うので、この10回目の節目を経て、いい大会なので全国から多くの方のご参加を先輩としても望んでいます。

 

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フィニッシュレーンを駆け抜ける江野

2位には入間市OLC玉露新隆徳-粂潤哉-佐藤遼平)、3位には筑波大学E(祖父江有祐-小牧弘季-永山遼真) が入った。筑波大学は大学生チームの中では最高順位であった。もし春インカレが開催されていたら筑波大学がどこまで活躍したのだろう…と、たらればの話になってしまうが、そんなことを考えさせるような活躍であった。

 

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MEクラスのコースの一例を上記に紹介する。コースプランナーの石渡雄也によれば、ルートチョイスが重要となるコース組みをしたとのこと。MEでは4→5のロングレッグを勝負レッグと想定しており、アタックの難易度が高い。また、△→1も道か尾根辿りかルートが分かれそうだが、アタックのしやすさだと尾根辿りが有利と想定していたとのこと。
なお、スペクテーターズレーン後は会場西の沢を回す予定だったが、ヤブがすごかったため南東に変更したそうである。

 

レースが終わり、これで大会も終わりか…と思いきや、最後のイベントが待っていた。日新音頭をみんなで踊ろう、というのだ。会場にて日新音頭のレクチャーも行われたが、なんと、動画で見ていた以上に難しい…。よく分からない動きをする者も多数。日新音頭は思ったよりも奥が深かった。
大会成功の喜びと感謝を込め、森の中で運営者と参加者が舞うというなかなか珍しい光景の中、DREAM RELLAYは幕を閉じた。

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♪日新、日新、矢板日新 アッソーレ

 

 [Writer : yi+]