#175_脅威! 野球場スプリント! - 伊勢原スプリント(第42回サン・スーシ大会)
11月13日、神奈川県伊勢原市の『伊勢原市総合運動公園』を舞台に伊勢原スプリント(第42回サン・スーシ大会)が開催され、M21は尾崎弘和(日曜ロングランナー/トータス)、W21は稲毛日菜子が制した。
※11/19に記事半分を先行公開していましたが、11/23に全文公開しました。
(更新部分、インタビュー、ミニスプリントなど)
良質な大会開催に定評のあるサン・スーシ。歴代の日本代表選考会など、数々のスプリントコース設定の最前線に立ってきた尾上秀雄のコース設定も魅力の一つだ。先日開催されたJOAのオンライン講習で、尾上のスプリントコース設定(https://youtu.be/l8sguy_5Ce0)に学んだ方も多いだろう。そんなサン・スーシのスプリント大会…というだけでも大変そそられるものであるが、大会要項にはさらに驚きの図が掲載されていた。
なんと、本大会では野球場(いせはらサンシャイン・スタジアム)を観客席も含めて走れるという。スタジアムスプリントといえば、新潟で開催されて毎回とんでもないレッグが飛び出すあの大会が有名ではあるが、サン・スーシの手にかかればどのような大会になるのだろうか。インカレスプリント1週間前のスプリント大会、さらにはJOAスプリント強化指定対象レースということもあり、例年以上の期待を集めた大会となった。
本大会のスタート地区は会場すぐということだったが、会場の体育館と隣接しているエリア…屋内にもかかわらずやけに人が集まっているな、と思い近寄ってみると…
スタート地区が屋内に存在していた。通常の大会ではあまり見られない様相に参加者も盛り上がっていた。野球場を走ることだけでも稀なのに、スタート地区でも驚かせてくるとは。しかし、相手はサン・スーシのスプリント、スタート地区で気分が浮ついたままレースに入るようでは間違いなくふるい落とされてしまうだろう。スタート地区で参加者の精神力を試している…というのは、筆者の深読みのしすぎであろうか。
ここで、本大会のコース図を紹介する。
2番コントロールでいきなり野球場に侵入。その後も何度も野球場に入ることになるが、レース中は複数のルートが見えるものの、どれが最適かを判断しながら走るのは難しい。最後まで集中力が問われるコースであった。
レース後に、コース設定者の尾上秀雄に話を伺った。
―まさか、野球場の中を走れるとは思いませんでした…。
尾上:本大会は、施設側が市民向けのオリエンテーリング大会(午前中に実施)を主催し、サンスーシが協力、午後の大会を相乗りして開催した形なので施設の自由が色々効きました。野球場は、普段開かないゲートなどを選択的に開放して、ルートチョイスのあるスプリントコースを提供しています。
―サン・スーシ大会には何度か参加させていただいていますが、個人的には今回のコースが一番難しく感じました。今回のコースを設定するにあたって考えていたことがありましたら教えてください。
尾上:今回のコース中におけるルート選択では、大損になるようなルートはあまり無く、差があっても4:6くらいの設定にしています。人のベストルートは自分のベストルートとは限らない、というのはよくある話で、本大会でも最短ルートを選んで立ち止まって悩むよりかは、長くなってもその分スピードを出して走ることも有用ですね。あと、使用エリアの話だと、テレイン東部の階段が多い山については後半に通過すると疲れている選手が怪我しやすいと考えて、(まだ選手の疲れが少ない)前半に通過するようなコースにしています。
―いくつかのレッグについて詳しくお話を聞かせてください。M21、W21の15→16(共通レッグ)はルートが分かれた選手が多いようです。
尾上:(上図参照)最も単純でスピードが出せるのは、15から手前に戻る左の赤のルートですね。黄+赤ルートを通るよりは左の赤オンリーの方が短くて速いですね。右の黄+青ルートは、最後に奥から手前への動き+階段もあって思ったよりも距離が膨らみますね。
尾上:あと、M21の17~19についても選手がどういう動きをしているか気になりますね。
尾上:17→18自体は難しいレッグではないですが、17→18に行くときにトイレ(建物)の前の隙間を通るんですよね。そうすると、18→19に行くときに「あそこに隙間があるな…」と思って出戻りでそこを選ぶ人が多いんじゃないかなと。ただ、実際はそこを通らず、右回りの方が早いように設定しています。
―私は疲れていて隙間を通るルートしか見えてなかったですね…。
尾上:コース全般を通して、コントロール位置の調整には気を使っていますね。野球場の中の「×」の位置も、コースを組みながら距離、レッグ線の交差具合、数字を書く場所といった要素から最適位置を探索しています。
―なるほど、そこまで考えられていたんですね。ついでに細かい話になりますが、いま野球場の中の「×」の話が出ましたが、これは当日の設置は、目立つ特徴物何点かからコンパスを振って交差位置に置いているとかでしょうか?
尾上:これはGPSに頼って設置していますね。(サン・スーシの)大場さんのいいGPSがあって、それを利用しています。
―正確な位置に置くのが意外と大変そうと思っていました。なるほど…。
尾上:コース全般としては、公園内の工事が突然始まるなどして、当初のコース構想とは異なるものにはなりましたが、緊張感のあるコースにはできたかなと思っています。
―本大会では、アフターイベントの1つにリベンジレースがありますね。競技に使った地図を使ってテレインに再入場できる、しかも計時もできるということで、復習にはぴったりのイベントですね。
尾上:1回走って終わり、というのではなく、後で検証を試してもらうことができますね。複数のルートを検証するのはもとより、ラップを見て「早い選手のタイムを自分も出すことができるか」というような挑戦もできますね。
―一口に「検証」といっても様々な使い方がありますね。選手としては、こういった機会をうまく使ってレベルアップを図りたいところですね。本日はどうもありがとうございました。
先のインタビューの中でアフターイベントの話が出たが、リベンジレースだけでなくミニスプリントも用意されていた。このミニスプリントだが、なんと会場体育館の2階観客席もがテレインとなっており、インドアOの要素もあった。
野球場のみならず、体育館の観客席までもがオリエンテーリングの舞台となってしまったことにはただただ驚くばかりである。建物内のOMAP表記に慣れないこともあってか、筆者は地図と現地の対応が非常に難しく感じたが、これを高速で駆け抜けるには高い集中力を要すると思った。本番のレースに加えて、アフターイベントも充実しており、スプリントを楽しみ尽くせる一日となった。
なお、本大会で野球場を走るスプリントに驚いてからちょうど1週間後、「野球場を走れるスプリントの機会なんてそうそう無いな…」と思っていた矢先に、インカレスプリントでも野球場が使われたことにはさらに驚いた。本大会はインカレスプリント対策としても絶好の機会だったようである。
https://mulka2.com/lapcenter/lapcombat2/index.jsp?event=6663
[Writer : yi+]