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2017年1月よりスタートしたオリエンテーリング関連のニュースサイトです。関東を拠点に、手の届く範囲でですが大会記事などをお届けしていきたいと思います。

#132_松島の魅力をたっぷり味わう一日 - 第42回東北大大会前日大会

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1123日、宮城県東松島市の『奥松島 人と歴史を繋ぐ海』を舞台に「42東北大学オリエンテーリング大会前日大会」が開催され、Lコースは桃井陽佑(KOLC)が制した。

松島と言えば、「日本三景」の一つに挙げられる風光明媚な地として知られている。そんな場所でNewテレインの市街地スプリントができるということで、本大会は多くのオリエンティアの期待を集めた。東北大としても、仙台から遠く離れた松島までテレイン開拓に乗り出すのは初めてとなる。前日大会としては確実に仙台から最遠の地での開催となり、東北大大会を含めてもここ十数年で最も遠い場所での開催といえよう。奥松島には、過去に宮城県協会で地図を作ったことがあるフォレストテレインが存在していたが、2010年時点ではヤブの発達具合はかなりのもので、筆者には道以外は使えそうにないと判断した記憶がある。本大会により、数十年ぶりに松島でオリエンテーリングが行われたのではないだろうか。
テレインの『奥松島 人と歴史を繋ぐ海』は奥松島の集落が含まれており、市街地の範囲は決して広くはないが、複雑に分岐する小径を的確に読み込んでルートを決定するテクニカルなスプリントが提供された。所々海沿いを通過し、開放感も感じることができる。大会当日はあいにくの雨模様であったが、天気がよければさぞかし印象に残る眺望だったことだろう。テレイン中には分岐という分岐に役員が常駐し、衝突事故を防ぐ措置が取られていた。見通しの悪い交差点の部分もあったが、役員の配置により安心して競技を楽しむことができた。
そして、本大会のコースは2MAP制となっており、2枚目は『縄文村歴史資料館 げんちゃんの住処』に地図が切り替わる。この地図は縮尺が1:1,000というマイクロスプリント仕様となっており、1枚目の1:4,000からの突然の縮尺変化により油断するとすぐにオーバーランしてしまうテレインとなっていた。実は、2010年に筆者は宮城県協会の人間としてこの縄文村歴史資料館にNewテレイン探しで来たことがあるのだが「テクニカルだが普通のスプリントの大会をするには狭すぎる」ということで断念した記憶がある。今回、マイクロスプリントとして市街地スプリントとつなげてテレインを利用する方法に「こんな手があったのか」と驚くとともに、かつて自分ができなかったことをすばらしいアレンジで提供した東北大の4年生には頭が下がる思いだ。
11月下旬の東北、しかも雨天ということで寒い中でのレースとなったが、フィニッシュでは地元協賛の牡蠣の味噌汁、サバのから揚げが無料で提供されており、多くの参加者が地元の温かい味を楽しんでいた。

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スタート直後には松島特有の風景が広がっている

 

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レース後には大変美味な牡蠣の味噌汁が待っていた…!

 

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温かい味を楽しむ参加者(奥の建物で地元協賛品がふるまわれている)

 

本大会の運営について、実行委員長の青芳龍に話を聞いてみた。

―東北大大会、前日大会合わせても異例ともいえる遠方での開催でしたね。
青芳:前日大会の開催にあたり、遠方から来る人に宮城県の地方の文化を伝えていきたいということを考えていました。同時に、斬新かつ競技性があるスプリントを提供したいとも考えていました。それができるのがこの松島でした。
―遠方だったので、地図調査とか大会準備は大変だったのではないですか?
青芳:どちらかといえば、調査よりも渉外の方が大変でした。いつもの大会はフォレスト、もしくは公園の渉外でしたが、今大会は市街地ということで、一軒一軒あいさつ回りをしたりとか回る件数も多くて勝手が違いました。東松島市のご協力、この地域の区長さんのご協力もあり、大会開催に至ることができました。協力してくれた役員のみんな、特に渉外担当者には感謝しています。
―テレインにはパトロールの役員がたくさん配置されていましたね。
青芳:市街地で生活している場所を本大会のテレインとして貸していただいている以上、住民の方に迷惑をかけてはいけないと考え、特に衝突は注意を払いました。競技者の急な飛び出しとかを止めるように配置していました。
―縄文村歴史資料館のマイクロスプリントは斬新でしたね。
青芳:この資料館の公園でスプリントができたら楽しいんじゃないか、というのがもともとテレイン選ぶ過程でありました…が、範囲が狭くて1:4000ではとても使えなかったので、周りのシティマップと結合して、思い切って1:1000で取り入れてみました。斬新の競技を目指してたので、その観点でもよかったんじゃないか、と思いました。
―とても魅力的な大会だったと思います。ありがとうございました。
青芳:参加者のみなさまには、オリエンテーリングを楽しんでいただけるのはもちろん、今大会で宮城県、奥松島がいいところだと思っていただければ幸いです。

 

縮尺が途中で変化する斬新なスプリントは、KOLCの桃井陽佑が制した。桃井にも、優勝しての感想を聞いてみた。

―優勝おめでとうございます。レースの感想を教えてください
桃井:とても楽しいテレイン・コースでした。勝敗がはっきりしているルートチョイスが何度もあり、細かい路地を正しく辿るためのナビゲーションも難しく、気が抜けないレースでした。また、海沿いの漁港や、現地の住民が使う細い路地、歴史資料館の園内にある縄文村など、様々な景色の中で走れた点も面白かったです。
―勝因としてはどのあたりにあるでしょうか?
桃井:レースでは、細かい部分をしっかり読み正解ルートを辿りつつ、余裕のある区間に少しの先読みを済ませ上でスピードを上げることに集中できたので、その緩急が今回の優勝に繋がったと思っています。
―前日大会はいかがでしたか?
桃井:翌日(東北大大会)のフォレストと合わせての2日間を通して、東北大OLCからの「手厚いおもてなし」を感じました。レース後に牡蠣汁をふるまってもらえたり、ゼッケン配布用のクリアファイルが松島限定のもので、更にその中に観光情報が沢山入っていたりなど、ギフトが多かった印象です。また運営者からの心のこもった対応も多く、その点にもおもてなしを感じました。
今回のレースで、日本の集落に秘められたスプリントテレインとしての可能性を感じました。まだ日本にたくさんの面白いテレインが眠っていると考えると、わくわくしてきますね。
―そうですね。これから現れるであろう未知の市街地テレインにも思いを馳せたいところです。どうもありがとうございました。

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優勝した桃井のルート図(前半)

 

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優勝した桃井のルート図(後半)

▼公式webサイト
https://www.42nd.olc.org.tohoku.ac.jp/pretaikai/

▼成績速報(Lap Center
https://mulka2.com/lapcenter/index.jsp?event=5673

 

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