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#190_伝統の大学大会がまた一つ復活! - 第26回千葉大大会

2月18日、東京都江戸川区の『篠崎公園』を舞台に第26回千葉大学オリエンテーリング大会が開催され、午前の部はL1クラスを尾崎弘和(トータス/日曜ロングランナー)、L2クラスを伊藤樹設楽町/ES関東C)が制した。また、午後に開催されたノックアウトスプリント(以下、KOスプリント)は、男性の部を根本啓介(京葉OLクラブ)、女性の部を小林祐子(青葉会)が制した。

 

 

千葉大大会の復活

千葉大大会が前回開催されたのは、2020年1月の香澄公園での第24回大会だった。ちょうど、コロナ禍が始まる直前のことである。その後、第25回大会は中止となり、今回3年ぶりの大会開催となった。3年ぶり…ということは、本大会の運営中心の学年は、一度も千葉大大会の当日運営を体験していないということになる。実行委員長の森下遥に話を伺ったところ「どういった段取りで運営を進めればよいか、そのために何を準備すればよいのかが(先輩の残してくれた)紙資料でしか分からなかった。(資料があるとはいえ)どうしても対応に抜け漏れもあって、それをカバーするのが大変だった。OBOGのアドバイスや、イベントアドバイザーの宮本さんにも助けていただきながら、何とか開催することができた」とのことで、運営経験不足による苦労は多かったようだ。一方で、森下「(本大会の運営中心となった)自分たちの代はコロナ禍での入部に関わらず10人ほどと、先輩たちの学年よりも人数が多い。コロナ禍中ということで各部の新歓情報も少ない中で、みんな自分たちで情報を調べてオリエンテーリング部に入った、という背景もあり、活動的なメンバーがそろった代だったと思う。同期とは、1年前から『大会開催したいね』という話をしており、『ずっとやりたかったことがやっとできた』と思っている」と、本大会開催への思いも聞かせてくれた。

今回、スプリント競技を開催することについては「いつかはフォレストで大会を開きたいと思っているが、まずは自分たちができることとして、スプリント大会で運営の方法、ノウハウを後輩につないでいきたいと考えた」とのことである。フォレストの方が、特に地図調査や当日の競技エリアの広さという点でスプリントよりも負担が大きいと踏んでの判断だったようだ。

なお、本大会午前の部は次年度の全日本スプリントに向けた日本ランキング対象大会となっており、今年度の全日本スプリント終了直後ということもあってスプリント競技の熱が冷めやらぬ中での大会となった。「スプリント競技の盛り上がり」への貢献も大きいのではないだろうか。

会場には、過去の千葉大大会で使用した地図が貼りだされており、競技前後の参加者からの注目を集めていた。特に、千葉大OLCのOBOGにとっては懐かしいものであろう。運営者からは「OBさんが『この地図、自分が作ったんだよ』なんて話もしてくれて嬉しかった」という声も聞かれた。

歴代の千葉大大会の地図

 

会場内にはキッチンカーの姿も

※筆者は左のお店のメキシカン丼を食べたが、非常に美味であった

 

狭いエリアを最大限に活用した競技

本大会のテレイン『篠崎公園』は複数のエリアに分かれており、午前のスプリントは『篠崎公園A地区』、午後のKOスプリントは『篠崎公園B地区』とそれぞれ異なるエリアで開催させた。テレインの面積は狭いが、限られたエリアを最大限に活用したコースが提供された。競技責任者/コース設定者の真家遼介「広さなどの制約が多い中で、いかにルートチョイスができるか、スピード感を楽しんでもらえるようなコースを意識して作った」と話してくれた。なお、A地区については東区域も競技エリアとして使用する予定だったが、大会直前に工事が入ってしまい、東区域を使わないコースになったそうである。また、会場からスタートまでの誘導路の一部も競技で使う予定だったが、渉外上の理由でお蔵入りになったとのことだ。使用できるエリアは当初の予定よりもだいぶ狭くなったようだが、その中でよくコースを組み上げたものである。

本大会ではL1、L2、Sと複数のコースがあるが、真家によればこの3コースすべてで共通使用しているレッグがあるとのこと。それが、L1の8→9、L2の9→10、Sの11→12のレッグだ。

全クラスの共通レッグ(写真はL2の9→10)

上図の通り、赤、緑、青の3ルートが存在する。運営想定では右の青ルートが一番早い想定とのこと。左の赤ルートも、柵の切れ目の場所を「建物との位置関係」で遠くから判断するとスピードを出して走れそうだ。どのルートを選ぶにせよ自信をもってスピードを出して走るのがまずは重要そうである。また、「ルートチョイスを熟考できないように、手前で細かいレッグを連続させたりするなどのセッティングも行っていた」とのことである。

コースの一例:L2クラスコース図

本大会午前の部は、L1クラスを尾崎弘和(トータス/日曜ロングランナー)が制した。尾崎は「事前の予想通り、簡単めのコースだとは思った。ただ、簡単なだけに、ミスしてしまうと根本選手とかに優勝をかっさらわれてしまうので、集中してレースに臨んだ。右左のルートを瞬時に判断したり、切り返しのすばやさを問う感じが楽しかった。序盤は城北中央公園のような懐かしさを感じた」と話していた。2位の根本啓介(京葉OLクラブ)とは10秒差での勝利でなった。根本は21番コントロールから先をそれぞれ5秒、5秒、7秒とミスして優勝を逃してしまったようだ。

一方のL2クラスは伊藤樹設楽町/ES関東C)が制した。伊藤「よくあるような公園だが、工夫してコースが組まれていて、楽しめた。学生大会でこのクオリティのスプリントを楽しめて感動した。自分の走りとしては、2週間前の全日本スプリントより体が動いた。全日本スプリントのときは(そこまでの練習として)スプリントが全然できていなかったので、全日本スプリントがいい刺激となって今日うまく体が動いたと思う」と話していた。

L1クラス入賞者

 

L2クラス入賞者

午後はKOスプリントを楽しむ

千葉大大会は午前だけでは終わらない。午後はノックアウトスプリント(KOスプリント)が開催された。KOスプリントは予選決勝方式で行われる。予選と準決勝では、出走する地図をスタート前に複数種の中から選ぶことができる。いかに早く走れる地図を判断・選択できるかも勝負の分かれ目と言えそうだ。

男子は22組110名による予選が行われ、各組あたり5名の中で上位1名が準決勝に進むことができる。準決勝では、4組22名が参加し、各組上位1名+上位タイム2名が決勝に進出できる。一方、女子は2組11名が参加、各組上位3名が決勝進出と、男子に比べると決勝進出のハードルは低い。

KOスプリントに挑む参加者(予選スタートにて)

男子準決勝は、コースは篠崎公園B地区中央の野球場を大きく回らせるコース(2→3→4→5にかけて)でどちらかというとひたすら走るコース。特に準決勝d組(根岸、尾崎、高見澤、今野、澤野)は決勝さながらの接戦で熱いレースが繰り広げられた。

男子決勝は、1→2→3→4と間の生垣を大きく迂回しないといけないコース。序盤から中盤にかけて本庄祐一(東大OLK)、根本啓介山田基生(青葉会/アイスの会)、そしてそのあとに3人続き、6選手が団子になっている状態が続く。7→8→9の切り返しで上位3名の順位が変動、その後9へ行くまでにこまめに順位変動し誰が優勝かわからない状況となったが、最終的に根本が制した。

女子決勝は、男子と同じコース。序盤は大石遥(静岡OLC)が先頭に出るが1→2で若干のルートミス、その隙に小林祐子(青葉会)、鷲津加子(東北大OLC)が前にでる。中盤は小林祐子皆川美紀子(みちの会)、鷲津加子の順番で野球場南側から北のエリアへ抜け、終盤7→8→9→10と鋭角の切り替えしレッグが連続する中、小林がレースを制した。

 

OBOGが「帰ってくる場所」としての大学大会

かつて、筆者は東北大大会の記事で、大学大会は「帰ってくる場所」としての側面もあるという記事を書いたことがある。
今回、千葉大大会にも千葉大OLCのOBOG会「鳩の会」のメンバーが多数参加していた。今も競技の最前線で活躍するメンバーもいれば、久しぶりにオリエンテーリングを楽しむメンバーもいたようで、かつての仲間たちと会場で楽しそうに話す姿が印象的だった。

大学大会に限った話ではないが、オリエンテーリング大会の会場でかつての仲間に会うことができるのは、とても嬉しいものである。大学大会の場合、OBOGにとってはなおさら集まりやすい環境となっている。今回、千葉大大会が3年ぶりに復活し、こうして鳩の会のみなさんが大会を通して楽しんでいたことはとても喜ばしいことだし、千葉大OLCが鳩の会のみなさんに「帰ってくる場所」と楽しい時間を提供したことは非常に意義深いことである。

会場記念撮影:鳩の会のみなさん

鳩の会のみなさんの参加コメントを一部紹介

・久しぶりの大会を開いてもらえて、OBOGとして嬉しいです。コースもスプリントっぽく、とても楽しく走れました(多比羅さん)

・久しぶりの千葉大大会開催で、いままでコロナ禍で中止になってしまったところもあるので、OBOGとして開催してくれて嬉しい。無事に開催できてよかったです(小山さん)

・こんなに素晴らしい大会を開いてくださって、後輩のみなさんはとても優秀で自分は頭が上がりません。今後もオリエンテーリングの繁栄のために貢献していってもらえたら嬉しいです。(村上さん)

・自分たちも大会開いたけれども、コロナ禍を越えて大会を開催する文化が続いていることは嬉しいと思います。参加者も集まってますし、こんな賑わう機会を後輩たちが作ってくれることはとても嬉しいです。(中浴さん)

・思ったよりコースがすごく楽しくて、Googleマップに事前に見たときは狭くてどうなるのかと思っていたが、いいコースでとても満足です。(本多さん)

来年の千葉大大会

千葉大大会はすでに来年の開催準備も進んでいるとのこと。過去に大会が行われたフォレストテレイン「宝竜寺」(千葉縣富津市)をリメイクしての開催を計画しているそうだ。今年度の大会復活を足掛かりに、次なる挑戦に向かう千葉大OLCを応援したい。

 

 [Writer : yi+]
[Assistant(KOスプリント取材) : Takumin]